2月に入り、外出時にマスクを着用する人が増えてきました。今年は風邪が全国的に流行の兆しを見せてきました。今回は意外と知らない風邪についての基礎知識をお話ししたいと思います。
まず、風邪というのは病名ではなく、喉や鼻を主とする呼吸器感染症の一群=風邪症候群で、頭痛や微熱、発熱、悪寒、鼻水が止まらない、食欲がなくなる、下痢をする、などの症状を引き起こします。
では、風邪をひいた場合、「風呂に入って汗をかく」のと「黙って寝ている」のどちらが正しいでしょうか。
正解は後者です。風邪をひいた時のベストな対処法は「サボって食べて寝る」に限ります。仕事をしても集中力がもちませんので、サボって回復を待つ。栄養価の高い食事をとると基礎体力が維持されて免疫力を高めます。風邪なのに夜更かしをしたり飲みすぎたりすると免疫力が下がり、風邪をこじらせてしまいます。風邪をひいたと思ったら、夜遊びなどせず、睡眠を十分に取ることが肝心です。仕事をサボり飲み会も断り、布団をかぶって寝れば人間本来の回復力で、数日もたてば自然治癒します。
では、一般的に言われる風邪薬とどうつきあえばいいでしょう。風邪薬とは、厳密に言えば呼吸器感染症に合う薬であり、総合感冒薬として「風邪の諸症状の緩和をする」と効能書きにもあります。
風邪は通常、1週間程度で治ります。ボルタレンや抗生物質といった薬のおかげで治るわけではないので、病院へ行って「風邪」と診断されても、処方された薬を飲まない、という選択肢も考えられます。
ただし1週間以上長引くと、この限りではありません。例えば肺炎の場合、免疫力で追いつかないので抗生物質が必要となります。「風邪は万病のもと」と言われます。これは「風邪はさまざまな病気を招く」という意味ではなく、風邪の症状が結核や肺炎、ガンの初期症状とほとんど変わらぬために用いられます。
本来は放っておいても治りますが、1週間たっても治らない場合は病院へ行くことを心がけてください。
そして、今回のテーマにも関連しますが風邪をひいている間、お風呂は禁物です。昔は湯冷めが怖かったものですが、今の世の中、家に風呂があればすぐに寝られるでしょうから、湯冷めの心配はありません。
それより心配なのは体力を落とすこと。温泉に何度も入ると「湯あたり」や「湯疲れ」をするように、風呂に入ると体力を落としてしまうのです。
汗をかいたままでは気持ち悪いでしょうが、風呂に入らなくても死ぬことはありません。
「怪しい」と思ったら入らずに寝てください。
「入るかやめるか」と迷った時も同様で、体が要注意信号を発しているからこそ、風呂に入るかどうか迷うわけです。「風邪をひいたことも忘れて風呂に入っていた」という時などは「大丈夫」のサイン。
こうした状況になるまで我慢してください。
風邪に効く食べ物として、私がオススメしたいのはディスカウントショップで売っているサムゲタン(おかゆ)のレトルトパック。消化がよく、鶏や朝鮮人参などの栄養素が入っています。風邪の時に温めるだけで済みますので、3食ぐらい買っておくといいでしょう。あるいは「砂糖を入れた葛湯」です。手っとり早く保存が利き、適度な栄養分もあって値段も安価。何より葛湯のねっとり感が体を保温してくれます。
また、若ければまだしも体力のない人ほど酒は禁物。風邪の時ぐらい、好きな酒でも我慢して寝てください。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。