黒田は名球会入りできる日米通算200勝まであと7勝として、シーズンインする。
「黒田はひょっとすると、本当は壊れたいんですよ。壊れたら引退できるんですから。あるいは成績が振るわず、打たれてしまったら。昨オフ、若い選手たちから『もう一度、一緒にやりたい』という言葉をもらったことで、辞める理由が見つからなくなった。今年10勝しなかったら恐らく終わりでしょうね。9勝、8勝ならピタッとユニホームを脱ぐと思います。もし6勝で終わっても、通算199勝で引退すると思いますよ。2000安打まであと29本の新井貴浩(39)は『カープで優勝できるなら、1999本で終わってもいい』と言う。黒田もまったく同じです」(迫勝則氏)
そんな黒田の今季のピッチングには、昨年とどんな変化が現れるのか。迫氏はさらに言う。
「昨年打たれた打者にどう対策を考えてくるか、楽しみですね。例えば、ヤクルトの山田哲人(23)。あるいは中日戦でも打たれたし、左打者にはよく打たれました。黒田はメジャーの打者よりも日本の打者のほうが手ごわいと思っていることでしょう。勝負魂、美学を見せてほしいと思います」
だからといって、マエケンが抜けた穴を黒田に頼るべきではない、と迫氏は主張するのだ。
「1人の投手で埋めるのは難しい。野村祐輔(26)、福井優也(28)、大瀬良大地(24)の3人が束になって、各自が3、4勝を上乗せしないと。黒田の役目は、彼ら選手たちに戦う姿勢を見せることです」
だが、そこは「男気」が代名詞となっている黒田。昨年の勝負どころでは、みずから投手コーチに中4日登板を直訴したというが、
「あれはマエケンが(中4日で)いこうとしないから黒田がいったんです。マエケンは妻に『肩は消耗品だし、メジャーに行くんだから』と諭され、中4日登板を止められました。黒田は『だったら俺がいく』と」(広島OB)
それでも昨年、CSに進出できなかったことに、
「黒田はものすごく責任を感じています」(前出・迫氏)
「ワシは優勝したいんじゃけ」と話す松田元オーナー(65)は、黒田に対しては「好きにやってくれたらええけぇ」と言っているという。
「プロ野球人生における最後の1球」がヒタヒタと迫りつつある黒田。四十路の体にムチ打って、獅子奮迅の投球を見せてくれることだろう。