平成のドラマで最高視聴率となる42.2%をはじき出し、社会現象になった「半沢直樹」(13年、TBS系)。最終回の半沢直樹(堺雅人)と大和田常務(香川照之)の対決に、岸川部長役の森田順平(61)は大きな役割を果たした。
──「倍返しだ!」が流行語になる大ヒットでしたが、実は、そこまで大きな期待はなかったそうですね。
森田 そう、監督やプロデューサーは「平均で15%、最終回で20%超えてくれれば」と言ってましたね。
──半沢と対峙する大和田常務の腹心・岸川部長という役でしたが、オファーが来てどうでしたか?
森田 台本はまだ上がってないから、池井戸潤さんの原作を先に読んで。役とキャスティングをイメージしながら読んでいくと、とにかくおもしろい。電車で読んでいて「よし!」とガッツポーズしたこともありましたよ。
──メイン監督の福澤克維氏とは「3年B組金八先生」からのつながりですか?
森田 そう、彼は「金八」のリアル世代で、それでTBSに入ってきた人。ただ、僕がやっていた乾先生は「大嫌いだった」と、今でも言うんですよ(笑)。
──「半沢直樹」には、わかりやすい悪役が次々と出てきましたが、岸川部長の役作りに関しては?
森田 第1部の江島副支店長(宮川一朗太)のように「これ見よがし」な腰巾着ではなく、どこかとっつきにくい「イヤ~なヤツ」という感じを出したかった。そのため、銀行員が着ないであろうダブルのスーツで雰囲気を作ったんです。
──最終回では半沢が大和田常務の不正を糾弾する。そのための重要な伏線となるのが、金融庁の黒崎検査官(片岡愛之助)と、岸川部長の娘との結婚。
森田 それを知った半沢が岸川のマンションに乗り込んでくる。人の家まで乗り込んでこないだろうって思うけど(笑)、あれが最終回に向けてのキモでしたね。
──そして半沢が勝つか、大和田が勝つかというラストの取締役会のシーン。約25分もの長丁場を、マルチアングルという手法で10回近く撮影を繰り返した。堺雅人が「尋常ではなかった」と漏らしています。
森田 朝の4時に撮影開始で、終わるまで10時間かかった。僕も香川君も堺君もずっと声を張り上げているから、テイクを重ねるたびにノドにくるんですよ。
──同じ演技を何回も重ねると、どんな効果が生まれますか?
森田 岸川部長が声を荒らげ、大和田常務の不正を認めるシーン。そこで大和田常務が僕に書類を投げつけるというのは、台本にはなかった。何回かやっていくうちに、芝居が膨らんでいくんですね。あの最終回に限らず、堺君や香川君の演技の濃さがよくて、現場に行くのが楽しくてしょうがなかったです。
──そして、大和田常務が半沢に敗れ、ついに「膝を折る瞬間」がやってきます。
森田 土下座なんかしたくなかっただろうし、それでも歯を食いしばって「誰が負けるか!」という表情をしている。ただ、大和田常務の本当の負けはその次。
──中野渡頭取(北大路欣也)に、責任を取っての出向ではなく、平取締役への降格を言い渡される場面ですか?
森田 精気のない表情になって、あそこで初めて彼は負けたんだと思います。
──そして半沢が出向を言い渡されたことで、続編への期待も尽きません。
森田 その後の原作には、出向になった岸川部長はひと言も出てこないけど(笑)、半沢がどうなっていくのか観てみたいですね。