震災から5年が過ぎても、一向に進展しないのが福島第一原発の事故処理である。現場に隣接する南相馬市では、この4月から作業現場に外国人が大量流入することが明らかになった。役所が地元の大パニックを恐れ「事実」をひた隠す問題を徹底調査。福島の「今」を独占スクープで届けよう。
福島第一原発事故から今年で5年が過ぎた。原発の廃炉作業と並行して、放射性物質に汚染された大地の除染作業は、2012年から続いている。
福島県内には、除染作業員が3万3000人おり、そのうち5000人以上の作業員がいるのが南相馬市だ。同市南部は原発から20キロ圏内に含まれているが、事故現場と隣接している南相馬市は今、揺れている。
問題となっているのは、汚染された大地をよみがえらせる担い手の除染作業員たちに関するものだった。
事故後、地域社会に起こった変化から説明しよう。
それは朝日新聞が昨年12月6日に報じた、「少女暴行容疑で除染作業員逮捕/福島県」というわずか190文字のベタ記事に象徴されている。当時19歳の除染作業員の男が、南相馬市JR原ノ町駅のトイレに女子高生を連れ込み、暴行未遂で逮捕されたのだ。南相馬市鹿島区内の仮設住宅に暮らす40代男性の佐藤氏=仮名=が証言する。
「夜に車で国道6号線を走っていたら、全裸の女性が泣きながら歩いていたんです。南相馬では女子中学生や高校生の母親が、車で学校に迎えに行くことが常識になっています」
市の海岸線は津波の影響で空き地が広がり、昼夜とも人はほとんどおらず「レイプ魔が出没している」という住民の声は多い。治安態勢が整備されていない状況にあって、多発しているのは窃盗だ。南相馬市で会社を経営する40代男性の高橋氏=仮名=が振り返る。
「車で出かけて、ちょっと買い物をして戻ってきたら、男が1人、工具のようなものでドアを開けようとしたんです。『何やってんだ!』と声をかけたら、隣に止めてあった兵庫ナンバーの軽に乗って一目散に逃げて行ったんです」
以前は車上荒らしなどなかった地域にあって、犯罪は除染作業員の流入とともに増加傾向にある。地元住民たちが両者を結び付けて考えてしまうのは、ある意味、しかたのないことだろう。
昨年8月に、大阪府寝屋川市で中学生2人を殺害した男も南相馬市で除染作業をしていた。こうしたことも手伝って住民たちの作業員たちに対するまなざしは厳しいものになっている。
南相馬市では今年4月をめどに、市北西部にある「避難指示解除準備区域」の本格解除を目指している。が、治安の悪化などを理由に住民の帰還は思ったように進んでいない。働き手が少ないため、飲食店も午後9時閉店というありさまだ。
しかし、ここにきて新たな問題も浮上している。前出・佐藤氏は、3月に入ってこれまで見なかったものを目撃したという。
「近所のコンビニに行ったら、作業服を着て大きな声で中国語を話している人がいたんです。除染作業で南相馬に住んでる中国人でした。日本人作業員だって、問題を起こしてるのに、これでまた中国人が入ってきたら‥‥」
この不安がただの杞憂でないことを証言するのは、南相馬市で建設会社を経営する男性社長だ。
「外国人作業員を入れるって話がゼネコンのほうから漏れてきているんですよ。今年は2000人規模で入れるっていう話です。南相馬には昨年の末くらいから、新しい外国人作業員の宿舎を作っています。高倉と上太田というところの2カ所で、そこには500人くらい収容できます」
今後、除染作業員として中国人やモンゴル人などアジア系の外国人を中心に増やしていく計画だという。
ジャーナリスト:八木澤高明