さて、その由伸監督をライバル視しているのはラミレス監督だけではない。7歳年上の阪神・金本知憲監督(48)も目をギラつかせている。阪神サイドも16年の「伝統の一戦」の告知ポスターで金本監督と由伸監督の顔写真を大々的に用いながら「GかTか!?」のキャッチコピーとともに、いつになく両軍指揮官の激突を大々的にあおっている。
「これは、我々も金本監督が内心で高橋監督のことを相当に意識していることをわかっているからなんですよ」(阪神球団関係者)
金本監督が「打倒・由伸」に傾斜するのは、ここまで歩んできたプロ野球人生に起因している。広島へ入団したプロ1年目の92年から93年のシーズンはサッパリで、当時はチームスタッフから「早めに第2の人生を考えたほうがいい」とまでアドバイスされていたことは広島関係者の間で有名な話だ。それが不屈のガッツと人一倍の努力によって肉体改造に成功すると、94年シーズンの後半から別人のように開花。2000年にはシーズン途中から4番に抜擢され、トリプルスリーまで達成し、球界を代表する大選手に成長した。
「カネ(金本)が2000年にブレイクしたのは、前年まで不動の4番だった江藤がFAで巨人に移籍したことが大きい。江藤の穴を俺が埋めなきゃという意識ももちろんあったが、それ以上にアイツには『ウチの選手までブン獲った巨人なんかにゃ負けん』という気持ちがあった。カネはもともとエリート集団の巨人が大嫌いなんだよ。自分は地味なカープからスタートして、苦労しながらスターの座をつかんだという自負もある。そういう憎っくき巨人で当時、いちばん意識していたのが由伸。彼は巨人入団1年目でいきなり大活躍し、以降もエリート街道まっしぐら。自分とは対照的だったからね。カネは『しょせん、自分は由伸と違って月見草』なんて誰かが言ったようなセリフも口にしとった(笑)。そう言いながら今も『最初から巨人で人気者だった由伸なんかには負けたくありません』と言っているよ」(広島OB)
その金本監督率いる阪神は、今季から「動作解析担当スコアラー」を新設。さらにラミレス監督も陣頭指揮を執りながら得意の配球分析能力をDeNAの面々に対し事細かにレクチャーするなど、両軍はデータ重視の野球にシフトしている。
「金本監督もラミレス監督も、巨人が13年限りで『戦略室』を廃止したことを知っている。ともにデータがあれば由伸巨人を丸裸にし、攻略できるという自信があるようだ」(球界関係者)
“怨敵”に包囲された由伸監督は両軍のライバル監督について問われると、いつも決まって、「特に意識していないですよ」と答えるのだが、いつまで泰然自若としていられるかはわからない。