フジテレビの日曜ゴールデンタイムで記録的な低視聴率が飛び出し、打ち切り騒動に発展。NHK大河ドラマ「平清盛」も歴代最低を更新する勢いだ。かつて低視聴率で話題を呼んだ伝説のドラマにスポットを当ててみると、本編をはるかにしのぐおもしろさの断末魔ストーリーが潜んでいた。
パクリ指摘で制作発表会見が中止のドタバタ劇
スポンサーへの補填で「次のドラマ」がタダに!
歴史的な超低視聴率ドラマ「家族のうた」(フジテレビ系)が6月3日、第8話をもって打ち切られた。何しろ、ゴールデンタイムに3%台という惨状。原因解明と同時に、その舞台裏と、知られざる「後処理」現場を追跡した。
昨年4月、芦田愛菜(7)主演の「マルモのおきて」で高視聴率をマークしたフジテレビの日曜夜9時は「ドラマチック・サンデー」と呼ばれる黄金枠。10年秋、フジとして31年ぶりに設けたドラマ枠だった。だが、今春スタートの「家族のうた」は大惨敗。フジでの連ドラ打ち切りは、明確な記録が残る87年以降、初の屈辱となった。いったい何が原因だったのか。テレビ誌編集者が解説する。
「主演のオダギリジョー(36)は、人気絶頂時に遊びまくっていたミュージシャン役。落ちこぼれたところに突然、娘を名乗る子供が3人も現れるという設定のホームコメディでした。しかし、これが87年の田村正和(68)主演『パパはニュースキャスター』(TBS系)にソックリで、登場する犬の数まで同じ(笑)。『パパは――』の脚本家、伴一彦氏がツイッターで類似点を指摘したことで、騒動が勃発しました」
TBSからの抗議を受け、フジは盗作こそ否定するも「認識不足だった」と設定変更を約束。スポーツ紙放送担当記者が明かす。
「撮影現場は台本の書き直しなどで大混乱に陥り、制作発表会見が行われないありさま。スタッフは1社提供のスポンサー、花王への説明と対応に追われた。この枠はバラエティ番組『あるある大事典』でもヤラセ騒動から打ち切りとなり、花王に迷惑をかけましたが、またか・・・です」
ケチがついたままのスタートだけに、初回視聴率が6.1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ、以下同)。翌週から3%台に急降下し、第4話でゴールデンタイムでは信じがたい3.1%を記録した。フジのベテラン局員が話す。
「そもそも打ち切りは、担当者が『2度目はないぞ』と脅かされる最終手段。かつて20回予定の『ピーマン白書』(80年)が6回で終了したことを思い出した」
この時の視聴率2%台こそ回避できたものの、「敗戦処理」に追われる身もまたツライという。広告代理店関係者が話す。
「CM料金は、その枠の前4週の平均視聴率から決まります。日曜のゴールデン枠ともなれば、通常30秒CMで月額3000万円ほどですから、視聴率1%当たりで200万円以上の換算となる。実際の視聴率が想定より低ければ、その『差額分』を代理店とテレビ局で補填することになります」
関係ない番組にトバッチリ
代理店関係者が続ける。
「通常、打ち切られた回数分の制作費を返却するということはありません。仮に『家族のうた』が目標視聴率を15%に置いていたなら、差額の11%分を何とかしろ、となる。つまり、視聴率を補填するんですよ、同じ枠で。11%なら11%分のCMをサービスする。もちろん、打ち切り後の放送内容も問われます」
「家族のうた」のケースでいえば、後釜として急きょ放送が決まったのは、特別版「早海さんと呼ばれる日」(前・後編)。前出・放送担当記者は言う。
「今年1月に放送された『早海さん――』は、松下奈緒(27)演じるお嬢様育ちのヒロインが、4人兄弟の長男と結婚。男だらけの嫁ぎ先で奮闘、成長していくホームドラマでした。平均視聴率は10%を超え、これは『ドラマチック・サンデー』枠で『マルモ――』に続く成績。また、新キャストに長男の元カノ役として内田有紀(36)を迎えるなど、スポンサー側に新鮮さをアピールし、了承を取り付けたのでしょう」
急な放送決定に伴い、制作現場は混乱を極めた。放送担当記者が苦笑する。
「実は『家族のうた』の放送開始直後、すでに『早海――』の準備に入っていたようです。が、出演者のスケジュールを確保しながら、いざ台本が出来上がると、せっかく頼み込んだ役者の名前が手違いで載っておらず、プロデューサーが謝罪回りをしたり・・・」
大失敗作は局内人事にも激震をもたらす。前出・局員は渋い顔だ。
「昨年、8年間守ってきた年間視聴率三冠王の座を日テレに奪われたばかりか、今年4月にはテレ朝が開局以来となる三冠王に輝き、フジは3位にまで落ちてしまった。そのため、昨夏に就任したばかりの編成制作局長のクビが飛ぶ、なんて話も出ている。かつて『視聴率100%男』の異名をとった敏腕局長ですが、彼が手がけた『SMAP×SMAP』に加え、この混乱に乗じて、数年前から不要論が出ている『笑っていいとも!』にも打ち切りが波及する可能性が出てきた」
一つのドラマの消滅は、さまざまな負の連鎖を起こすのである。