濡れ場でなければヘアOK
同作品は、冒頭から風俗嬢が「中に出してぇ!」とバストトップをさらしながら騎乗位で腰を振りまくるなど扇情シーンが満載だ。
実は松に関しても、冒頭のオナニーシーンの他に、もう一つのハイライトがあった。
夫との日々のすれ違いがもとで人生に疲れを感じた妻が、トイレでボーっと用を足している場面である。
放尿を終えたと思しき松は、タイツとパンティを膝下までズリ下げたまま、下半身を露出した状態でトイレを出た。向かい側にある棚の引き出しから生理用ナプキンを取り出すと、薄いブルーのパンティにそれを装着する。そして、パンティとタイツをズリ上げた。その時だ。
「あっ‥‥!」
と、思わず声を上げそうになった。
なんと松の下半身、脚の付け根を結ぶラインの中央部分に黒い茂みが見えたのである。漆黒の部分はフサフサと動いているようにさえ見えた。時間にして2・5秒。確かにそれがヘアだったと映ったのである。
とはいえ、「R -15指定」作品でヘアが見えるシーンを上映することはできるのか。
前出・前田氏が解説する。
「R -15でも、濡れ場のように直接的な性表現ではなく、必然性があるシーンであれば問題はないですね。いずれにせよ、自慰シーンでも、生理用品を付けるシーンでも、そのシーンに必然性があったことが特筆すべき点だったと思う。そうしたごく自然な流れを表現する場面で、女性の心の奥の部分を演じられるところが女優・松たか子の演技力であり、それを引き出す西川美和監督にも凄みを感じました」
さらにこの“ヘアシーン”には、松のなみなみならぬ女優魂が詰まっているという。同映画の関係者が明かす。
「生理用品を装着するシーンは当初、首より下を撮影することにして、吹き替えの女優に演じてもらう案がありました。ところが松は、それを断ったんです。あの場面が、演じる妻の心情がかいま見える重要なシーンだと理解していたからでしょうね」
作品上、必然的な演技の中で何が見えようとも、それを気にしないのが本物の女優なのだろう。
ところで松といえば、プライベートでは、07年12月に、ギタリストの佐橋佳幸(50)と結婚している。
差し出がましいようだが、ここまで体当たりな艶技を公開して、夫婦生活に支障はないのかと心配してしまう。
それを受け、ある芸能関係者はこう話すのである。
「夫がツアーで家を空けることが多く、夫婦はすれ違いになりがちだといいます。そんな不満が募ってつい口にしたのかもしれませんが、松は夫婦生活について『夫は淡泊だ』とこぼすこともあるそうです。思えば過去には、人気俳優、実力派スタイリスト、大物スポーツ選手との交際が報じられた。その中の1人は、『探究心が強いから、夜も貪欲だった』などと冗談めかして言っていたほどですから、夫婦生活にもの足りない部分があるのかもしれません」
こうした背景も、松を女優として突き動かす動機の一つかもしれない。前出の芸能関係者が続ける。
「そればかりか、同じ梨園出身女優の寺島しのぶ(39)が、10年にベルリン映画祭で最優秀女優賞を獲ったことも意識しているようです。最近は、『女優業に専念したい』と周囲に話しています」
本誌連載でもおなじみの映画評論家・秋本鉄次氏は今作品をこう評する。
「生身の女の凄みが、十二分に伝わってくる作品です。けれど、そこに笑いも込められるところが松の演技力であり、監督の演出力ではないでしょうか。世の男性は、夫になったつもりで肝を冷やしつつ、肌の露出をはるかに上回る迫真の自慰シーンを楽しめるはずです」
熟女というにはまだ早い、人妻女優・松の体を張った艶技は必見のようだ。