東日本大震災から5年が経過したが、マスコミの報道は3月に集中。国民の関心もしだいに薄れていく中、南相馬市出身で現在も「原発禍の街」を取材し続けている岡邦行氏が、テレビ・新聞が報じない“真の姿”を暴く!
福島では駅前や商店街などに「ようこそ!福島へ 福が満開、福のしま。」と書かれたのぼりが何本も立ち、JR福島駅で降りると「元気になった福島に来ていただき、ありがとうございます!」といったアナウンスが迎えてくれる。
しかし、いまだに10万人近くが放射能を恐れ、県内外に避難している。
福島県の浜通り。原発禍の街を縦断する国道6号を車で走ると、道路沿いに、
「事故多発 牛と衝突」
「事故多発 猪と衝突」
と書かれた看板が立てられている。
「夜になるとイノシシや飼い主を失った離れ牛が出てきて、車に突進するんだ」
地元住民はそう言って苦笑したが、笑いごとではない。
伊達市の仮設住宅に住む、4年前から取材に協力してくれるAさんは、飯舘村の実家に帰るたびに、ため息をついている。
「だってよ、村に帰るとイノシシやサルに家ん中も墓も荒らされてる。イノシシなんか『俺らの村に何しに来た?』なんて面で近寄って来るんだ。もう村は野生動物園になっちまったよ」
原発禍の街が動物園とは、まったく笑えない話だが、昨年12月の南相馬市市議会を傍聴した際、農業を営む議員が一般質問で訴えていた。
「女性にかみつくイノシシやサルもいる。通学路にイノシシが出没するおそれもあり、児童の安全を確保すべきだ。アライグマやハクビシンも増えている。アライグマは狂犬病のウイルスを持っているため危険だ。捕獲した動物を処分する焼却施設も増設すべき‥‥」
市役所に出向いて野生動物対策を聞くと、担当職員はこう説明した。
「地元の猟友会の協力でイノシシは年間1500頭、サルは200頭近く捕獲しています。捕獲した場合、イノシシなら写真と尻尾、サルは写真を持参すれば1頭につき報奨金2万円を出します」
自分の畑にワナを仕掛け、イノシシを捕獲する知人が語る。
「原発事故の前なら、イノシシはボタン鍋で食えたけどね。今は放射能だらけで、1キロ当たり2万ベクレルもあって食えたもんじゃない(基準値は1キロ当たり100ベクレル)。あと、サルは、銃口を向けると『勘弁してください』と、言葉こそ発しないものの、拝むマネをするから、猟友会の連中は、『なかなか撃てないんだよな』と言ってたよ」
南相馬市の町なかでも、子連れのイノシシやキツネが頻繁に出没している。
岡邦行(ルポライター)