昨年12月、19歳の除染作業員が南相馬市のJR原ノ町駅のトイレに女子高生を連れ込み、暴行未遂で逮捕された。
現在、南相馬市には60カ所以上の作業員宿舎があり、1万人以上の作業員が滞在している。
「毎日朝礼で責任者が言動を慎むように教育しているんですけどね‥‥」
取材で知り合ったゼネコン関係者は、そう私に言った。
もちろん、犯罪や問題を起こすのはごく一部の者だが、入れ墨をしている作業員2人が親子連れに因縁をつける現場を私自身が目撃している。宿舎で作業員同士がケンカし、血だらけとなって病院に運ばれたものの、上半身が入れ墨だったため、若い看護師が気絶したという話も聞いた。ベテラン看護師が証言する。
「去年の秋頃、よく時間外受診に来ていた作業員がいました。その人が福島市で麻薬所持で逮捕され、テレビに顔写真が映し出された。その時は、みんなで『あっ、あの人だ!』って。作業員が麻薬をやってる話はよく聞きます‥‥」
当然、作業員の実態は警察署も把握し、雇うゼネコンと市役所も連携、犯罪防止に躍起になっている。この2月からは職務中の警察官が制服姿で自由にコンビニに出入りできるようになった。
しかし、効果が上がっているとは言えない。作業員の激増で市内の交通量も増し、交通事故も多い。震災前は年間1130件ほどだったが、年々増えて昨年は2050件超。その2割が作業員の車両だという。
また、パチンコ店に入ると、いつも満員御礼だ。顔見知りの店員によると多額の賠償金を手にして、働く意欲をなくした30代、40代の客が多いという。
「1月にはジャスモール(ショッピングセンター)内に1023台もある大型パチンコ店がオープンしたんです。そこも満員と聞くけど、スタッフを募集してもなかなか集まらないって。昼間の時給は1300円で、夜の10時以降は1625円と東京並みの時給なのにね。客は多いのに働く者は少ないんですよ。牛丼店なんかも夜は時給1500円以上にしないと働き手は見つかんないらしいね」
東日本大震災から5年が過ぎても、原発禍の街は、あえいでいる。
岡邦行(ルポライター)