京都の銘菓「八つ橋」や「お屠蘇」の材料としても知られているスパイスの王様、シナモンは旧約聖書にもその名が出ているほどの世界最古のスパイスであり、古くから薬用としても愛用されてきた。漢方では枝(桂枝)と皮(肉桂)の両方が使用され、生薬として鎮静、鎮痛、抗菌、血圧降下、覚醒、抗ストレス、発汗、解熱、整腸などに用いられてきた。横浜で純正堂漢方薬局を営む薬剤師、渡邉正司氏が言う。
「桂皮(ケイヒ)、肉桂(ニクケイ)のいちばんの効果は、毛細血管の修復、保持です。ベルギーのリエージュ大学病院の研究によれば、65歳以上の人の毛細血管の数は、30歳以下の人よりも、なんと40%も減少しています。高齢者にとって桂皮、肉桂の効果は大きい」
大手化粧品メーカー資生堂は「NEWS RELEASE」でこう記述している。
〈ソウル大学皮膚科チャン教授との共同研究により、40代後半になると皮膚毛細血管の機能が低下し、栄養が皮膚の末端まで届きにくくなることを見出した。そしてこの事実をもとに、大阪大学微生物病研究所高倉伸幸教授との共同研究により、この皮膚毛細血管の機能低下を改善する効果が、クスノキ科の高木“ケイ”の樹皮から抽出した“ケイヒエキス”にあることを世界で初めて発見した〉
前出・渡邉氏が解説する。
「この研究によると、血管内皮細胞の中にある受容体Tie2の働きが弱まると、毛細血管の機能が衰える。シナモンに含まれる桂皮エキスはこのTie2を活性化させる作用があるので、毛細血管の機能が回復。髪の毛にも栄養が行き届くようになり、育毛効果が見られた、と言っているのです」
シナモンの取り方は簡単。シナモンパウダーをトーストやフルーツ(バナナやリンゴなど)に振りかけて食べたり、紅茶などに入れて飲むだけ。ただし、いくら育毛に効果があるからといって、取りすぎはNG。シナモンに含まれるクマリンを過剰摂取すると、肝障害を起こすこともあるからだ。1日の摂取量の目安は体重1キログラムにつき0.1ミリグラム。つまり、小さじ半分から1杯である。そしてすぐに効果が現れるものでもない。少なくても3カ月くらいは続ける必要はありそうだが、紅茶に入れて飲むだけなら続けられそうである。
(谷川渓)