子供からスーツを着たいい大人まで、スマホ片手にゾンビのごとくウロウロ歩く奇妙な光景──。苦言すら耳に入らない「ポケモンGO」のプレイヤーが爆発的に増えている。足を止めて注意しなければ、気づかぬうちに犯罪の影が忍び寄っているというのに‥‥。
アメリカでの配信開始から遅れること約2週間、7月22日から「ポケモンGO」が日本でもダウンロード可能となった。スマホで遊ぶこのゲームは基本プレイが無料。プレイヤーは位置情報を利用した現実の地図をスマホ画面で確認し、移動しながら画面上に現れたモンスターを捕まえたり、他人と所有するモンスター同士を対戦させたりすることができる。ゲーム内で課金すれば、強力なアイテムを購入でき、貴重なポケモンをゲットしやすくなるという収益システムだ。
このブームに後押しされ、東京証券取引所で任天堂株の取引高が1営業日で7000億円を突破するなど、影響は日本経済へと波及している。
一方で、“歩きスマホ”を助長するようなシステムが、事故を引き起こす原因となっているのも現実だ。
日本に先駆けて配信された海外では、カナダの少年が熱中するあまりアメリカ国境を越えて身柄拘束されたり、グアテマラではポケモンを追いかけた青年が民家への不法侵入者と見なされ射殺されたり、重大な事案が発生している。
「すでに日本でも配信からわずか3日で、プレイしながらの自動車運転などで取締りを受けた数が71件、人身事故が4件、物損事故が32件も発生した。渋谷では若い女性がプレイ中にスマホを操作したところ、近くにいた男性が自分を勝手に撮影していると勘違いし、暴行事件に発展したケースまでありました」(社会部記者)
何も突発的な事故ばかりではない。ポケモンユーザーの数は過去の配信ゲームの記録を大幅に打ち破ることが確実とされ、大きな金が動くだけに、闇のマーケットを知るヤクザ関係者も不敵に笑いつつ、こう言う。
「すでに中国人が日本のヤクザもんを使って荒稼ぎしてるって話だ。ポケモンユーザーに、ポケモンのニセモノのゲームにアクセスするメールを配信してるってな。ユーザーがそのゲームには直接アクセスしなくても、メールを開いただけで、ケータイ内の各種パスワードやアカウントから個人情報まで抜いて、チャージされた電子マネーを海外の別口座に転送。さらには、他人のデータを使って通販で買い物だよ。届け先を空き家にして、買った商品は現金化。請求だけは持ち主に行くってわけだ。1万~2万の控えめな買い物だと携帯課金で被害に気づかないのもいるみたいだな」
過去にも、他人のケータイやパソコンのデータを乗っ取るというサイバー犯罪は横行してきたが、ポケモンユーザーはゲームの世界に没頭するあまり、周りが見えない向きも多く、さらなる犯罪被害者を増やしてしまいそうなのだ。
「ロリコンDVDが闇で高値販売されて、売れに売れてんだよ。それぐらい変態はそこら中にいっぱいいるから、誘拐や性犯罪も当然出てくる。射幸心をあおるように、捕獲しづらいレアなポケモンがいるらしいな。SNSでポケモンユーザーのガキに呼びかけて、その居場所を教えればホイホイ寄ってくるよ。集まってくる中から、目当てを見つけて、同じ方法で別の場所に誘導していくってやり方だけど、ハナからデータを買っておけば、年齢や容姿、クレジットをたくさん持ってるかだってわかる。変態は一人で行動するかもしれないけど、結局、データを売ってるのはヤクザもん。1件2万円で取り引きされるデータもあるってな」(前出・ヤクザ関係者)
ゲーム業界関係者は行く末をこう案じている。
「犯罪被害が増大して、社会的批判があまりに高まると配信停止の措置が取られます。もしそうなった場合、課金した多くのユーザーから莫大な損害賠償が請求されるでしょうね」
現実世界では、“モンスター”がプレイヤーをゲットしようと狙っているのである。