坪井 いつか結婚して家庭を持つことを考えると、自分のためだけに使える時間は、実は意外と少ないんじゃないかって思えたんです。となると、「私は今、いちばんやりたいことに挑戦しているんだろうか?」と、急に不安になったんです。
テリー なるほど。そのいちばんやりたいことがタレントだった、と。
坪井 そうなんです。で、「ひとつしか職業を選んじゃダメ」って勝手に思い込んでいたけど、「別にタレントも編集者も、好きな仕事なら両方やってもいいんじゃないか?」という結論を自分の中で出しました。
テリー 気持ちはわかるよ。だって、小学館って給料もいいし、誰でも入れる会社じゃないから。辞めるのはもったいないよね。
坪井 私自身、小学館は就職浪人を経て入った会社でしたし、すごく感謝もしていたので、辞めることに抵抗がありました。なので、人事担当に「副業って、どこまで認められますか?」って聞いてみたんです。
テリー そりゃ思い切ったね! 「ダメに決まってるだろ! 片手間に給料を渡しているわけじゃないんだ!」って言われたんじゃないの?
坪井 怒ってはいませんでしたが、「ダメ」とさらりと言われました(笑)。
テリー 副業なんて内緒でやってるヤツはたくさんいるけど、そこまでストレートに聞く人はいないよ。
坪井 ただ、私がやりたいのは芸能活動だったので、これは内緒にできないじゃないですか。
テリー そりゃそうだ。
坪井 だから、もう辞めるしかない、と決心したところ、「編集の経験を生かしながらタレント活動をしてもいい」という会社に出会ってしまったんです。
テリー ええっ!? また夢みたいな展開だね。
坪井 当時創業1年くらいのIT系ベンチャー企業だったんですけど、「その会社で業界誌を立ち上げ、その編集をしながらタレント活動も可」という契約で、入社しました。
テリー だけどさ、「タレントになりました」って言うだけじゃ、芸能活動はできないでしょ?
坪井 まったくそのとおりです(笑)。その時は芸能プロダクションにも入ってなかったので、転職してから最初の3カ月ぐらいは毎晩、編集者時代に知り合ったテレビ局や出版社の方に会って相談したり、いろいろな方を紹介してもらっていました。
テリー 毎晩! 根性あるなぁ、それは偉いね。
坪井 でも、100人の方とお会いしても、お仕事につながるのは10%もあればいいほうですよね。
テリー いや、10%もつながったらスゴいよ。俺なんか、企画書を100本書いたって1本通るか通らないかだもん。
坪井 えっ、テリーさんでもそうなんですか? ただ、そういう場になると、お酒とか飲むじゃないですか。「私、芸能界を目指したいです!」とか言ってるのに、やってることは毎晩飲み歩いているだけで、その頃は「私、いったい何してるんだろう?」って、けっこう落ち込んだりしました。
テリー サラリーマンの営業だって、そんなもんじゃない。最後にはしっかりタレントになれたんだからすごいよ。坪井さん、営業マンとしてもいけそうだね。
坪井 アハハ、それはどうでしょう。でも、夢の実現のためなら頑張れました。