昨シーズンは自己最多の35本塁打、94打点を記録。今シーズンもすでに20本塁打を越えるなど、パ・リーグ首位を走るチームの牽引役を果たしている松田宣浩(現・ソフトバンク)。ホームランを打つたびに「熱男~~!!」ポーズでスタンドを率先的に盛り上げるムードメーカーとしても今やチームに欠かせない存在だが、そんな松田が高校時代、唯一出場した甲子園では、その陽気な性格が涙でくれるほどの屈辱的な結末が待っていた。
岐阜の名門・中京高校に進学後、主に3番ショートで活躍し、高校通算61本塁打を記録。2年生時の00年夏の選手権には双子の兄とともに出場している。
その初戦の那覇(沖縄)戦では4打数1安打2三振1四球1盗塁とチームの主力としてはややもの足りない成績に終わったが、彼を待っていた最大の落とし穴は守備だった。1-1の同点のまま突入した延長11回表。2死二塁のピンチの場面で那覇の打者が放った打球は三遊間への深い当たりとなった。ショートの松田はこの打球に素早く追いついたが、焦りからボールを握り損なっていた。次の瞬間、ファーストへ投げたはずの送球は悪送球となり、ジャンプする一塁手の頭上を越えてファールグラウンドを転々。その間に二塁ランナーに勝ち越しのホームインを許してしまったのである。
だが、これは単なるミスではないことは誰の目にも明らかだった。普通なら外野へ抜ける打球に足の速い松田だからこそ追いつき、プロでも通用した肩の強い松田だったからこそ一塁へ投げられた、ワンランク上のプレーだったのだ。
しかし、結果的には痛恨のエラー。攻走守すべてにおいてスピード感ある、三拍子揃ったプレーが魅力の松田ならではの“しくじり”が、彼の夏をも終わらせたのである。
(高校野球評論家・上杉純也)