今や福岡ソフトバンク不動のショートとしてチームを牽引する今宮健太。その今宮は明豊(大分)時代は1番・エース、もしくは3番・サード兼ショート兼リリーフ投手をこなすマルチプレーヤーだった。甲子園には08年春、そして09年春夏と3季出場を果たしているが、ここで宿命のライバルとも言える存在と出会っている。それが花巻東(岩手)の剛腕サウスポー・菊池雄星(現・西武)である。
最初の対決は09年春選抜の2回戦。好勝負が期待されたが、打者・今宮は4打数1安打2三振。投手・今宮もピンチの場面でリリーフするも、先制の2点タイムリーを許すなど、0-4の完敗を喫してしまう。
その夏、菊池へのリベンジに燃える明豊は県大会を圧勝し、甲子園に帰ってきた。興南(沖縄)と西条(愛媛)を撃破。迎えた3回戦の相手は最速146キロを誇るプロ注目の本格派右腕・庄司隼人(現・広島)擁する常葉橘(静岡)。この強敵相手に今宮は投げて打って、獅子奮迅の活躍を見せることになる。
この試合、今宮はショートで先発するも、2-4とリードされた3回途中からリリーフ登板。以後、10回までの7回2/3イニングを被安打5、奪三振7、失点2、自責点2。打っては庄司から3安打3四球で全打席出塁。中でも5-6とリードされた9回表無死三塁の場面ではライト前へ値千金の同点タイムリーを放っている。延長12回に2点を勝ち越した明豊が勝利し、ベスト8進出を果たしたのである。
迎えた準々決勝。ついに宿敵・花巻東と激突することに。だが、この試合で先発マウンドに上がった今宮は4回途中までで4失点。打線も菊池の前に完璧に抑えられてしまう。ところが、5回裏の明豊の攻撃時のこと。菊池が背中の痛みを訴え緊急降板。ここから明豊の反撃が始まり、8回裏には先頭打者今宮の二塁打をきっかけについに逆転に成功。それでも粘る花巻東に9回同点に追いつかれ、延長10回表に決勝点を許してしまう。今宮は9回に追いつかれた直後に再びマウンドに上り、この場面は2者連続三振でピンチを断ったが延長10回、ついに力尽きたのだった。
実は花巻東に惜敗したこの試合で投手・今宮はある記録を打ち立てている。それが夏の選手権史上3位タイとなる最速154キロマークである。肩が抜群に強いことの証明とも言えるが、プロ入り後の今宮の守備を見ていると納得がいく。その肩とセンス、そして打力を生かした野手転向は大正解だったのだ。
(高校野球評論家・上杉純也)