昨オフ、球界の盟主を舞台に勃発した「野球賭博」事件。4人の処分者を出し、中でも深く関与していた元投手の逮捕にまで発展した。これで幕引きかと思いきや、ついに捜査のメスが暴力団にまで切り込んだのである。果てしない闇の彼方に、巨人の暗部が透けて見えだした。
球界関係者が言う。
「今、巨人のロッカールームは、一連の野球賭博問題について一切触れてはいけないような重苦しい雰囲気になっているんです。みんな口には出さないですが、野球賭博に関与してまだ処分されていない、疑惑選手の名前はおおよそわかっていますからね。その中には主力選手もいる。ゴールデンウイークに笠原将生被告(25)らが逮捕されて決着がついたと思っていたら、今回、その先の暴力団の逮捕。新たな証言がチームに影響を及ぼさないか戦々恐々としています」
9月24日、巨人を激震させた野球賭博事件に絡み、賭博開帳図利容疑で、六代目山口組三代目矢嶋組系幹部・三宅雅剛容疑者(42)と、その舎弟だった元暴力団員の酒井良昌容疑者(37)、福岡勝美容疑者(36)が逮捕された。シーズン途中の4月29日に、元飲食店経営者・斉藤聡被告(38)=賭博開帳図利容疑=と笠原被告=同ほう助容疑=が逮捕された段階ではうやむやだった、事件の背景にある暗部がついに浮き彫りとなったのだ。
笠原被告は、3年前に斉藤被告が経営していた東京・新宿の「I」という店で同被告と知り合い、ギャンブル好きで意気投合。多くの巨人の同僚も次々と紹介していった。結果、斉藤被告が「小胴元」と呼ばれる立場で客を募っていた野球賭博に複数の選手たちが手を染め、笠原被告ばかりか、福田聡志氏(33)、松本竜也氏(23)、高木京介氏(27)の4人が巨人を追われることになったのである。
斉藤被告の上には、ピラミッド形式で上納していくように、「中胴元」の三宅容疑者が控えていた。すなわち、日本最大規模の指定暴力団と巨人を結ぶラインが出来上がっていたということだろう。
コトの詳細を知る、ヤクザ幹部のX氏が口を開く。
「報道では、笠原が今回逮捕された三宅ら3人を知らないって言ってたそうだな。そんなはずはない。斉藤が『I』で紹介してるよ。集金役だった舎弟の2人は、三宅の運転手もやってたから、顔を知らないってことはないわな」
そればかりか、笠原被告と三宅容疑者の関係はもっとズブズブだったとの証言まで飛び出した。
「三宅がいる矢嶋組といえば、四国の名門組織だ。ただ三宅は矢嶋組が吸収した松山連合会の出身で、もとは野球賭博よりも高利貸しが専門。何年か前(14年)に、渋谷で『大使館カジノ』が摘発されたよな? あそこでも金貸し屋やってたよ。負け分の4分の1まで貸すんだ。1000万円なら250万円で、利息は3日~1週間で1割。ボロ儲けしてたな。当時、開帳で逮捕されたのは無職の男だったけど、実際の経営者は三宅だったって噂がある。そのカジノにも笠原は出入りしてたって話だ」(X氏)
三宅容疑者は渋谷に持っていた組事務所を、客に法外なレートで麻雀を打たせる、通称「マンション麻雀」にしていたという。
「命の取り合いみたいな麻雀だよ。1時間で40万~50万円が動く。ここにも笠原は足を運んでたって。三宅は摘発のおそれがあるとわかれば慎重になるから、去年の夏ぐらいで閉めちゃったな。野球賭博からも、斉藤がパクられてからは引いてたんだけど、とうとう捕まったか」(X氏)
プロ野球選手が暴力団と交際、しかも野球賭博が絡んでくるのであれば、八百長につながるのではないか、と疑いを持たれるのは言うまでもない。笠原被告はせっせとそのラインに同僚選手たちを供給していたというから、今後の波及が注目されるのだ。
「笠原が引き込んでいたのは、同じブルペンで待機してた投手が中心だった。しかも一、二軍を行き来してたから、その数も多かったってわけだ。処分を逃れた現役の中にも、笠原の舎弟だったのとか、一軍の主戦とか、斉藤の店に顔を出してたのはいっぱいいたけどな」(X氏)