豊洲市場の移転問題で大揺れの最中、「小池劇場」第2幕が開いた。今度は東京五輪の会場変更を巡って、かつて“老害”とも報じられた天敵・森喜朗氏と小池都知事の間で戦火が上がったのだ。小池氏を包囲する政敵たちも鼻息荒く参戦。「ケンカ5番勝負」の抹殺暗闘劇を完全レポートする!
文部科学省が不穏な空気に包まれたのは、9月29日の午前中だった。
20年東京五輪の調整会議が行われ、小池百合子都知事(64)と大会組織委員会で元総理の森喜朗会長(79)が机を挟んで向かい合って座る。重苦しい空気の中、開催費用などを検証する東京都の調査チームが、「海の森水上競技場」(491億円)、「五輪水泳センター」(683億円)、「有明アリーナ」(404億円)の3会場で施設整備費が異常に膨らみ、見直し案を報告。今のままでは大会総費用が3兆円を超える可能性を指摘した。
会議閉会後、厳しい表情で報道陣の前に現れた森氏は、予定にはなかった囲み取材に応じると、約20分間、鬱憤を爆発させた。
「(見直し案について)国際オリンピック委員会の理事会で決まっていることをひっくり返すことはきわめて難しい」
「我々は東京都の下部組織ではない」
これに対して、小池氏も会議後、
「負の遺産を都民に押しつけるわけにはいかない」
と真っ向から反論。「豊洲移転問題」と同様に、全面戦争の火の手が上がったのだ。
思えば「知事」と「会長」として初めて顔を合わせた8月9日は、笑顔で握手を交わした2人だったが、もともとは犬猿の仲である。07年に第1次安倍内閣で防衛大臣に小池氏が起用されると、「防衛省の天皇」と呼ばれた守屋武昌防衛事務次官を更迭。すると、
「(守屋氏が)切腹しようとしたら、小池氏が後ろから刀で切りつけた感じ」
と、森氏から批判を浴びる。
「その翌年の自民党総裁選では、『町村派』のドンだった森氏が麻生太郎氏(76)を推す方針だったのに小池氏が勝手に出馬を表明。派内が分裂して、森氏が激怒していました」(政治部記者)
最近では、リオ五輪の閉会式出席後、森氏は小池氏と一緒の便にならないようにフライト時間を調整させたこともあったという。
約9年前から続く“攻防”の裏側を、政治評論家の浅川博忠氏が解説する。
「森さんは以前から、時の有力政治家に近づいて、『渡り鳥』のように出世する小池さんを毛嫌いしていた。都知事になったとたん、今まで五輪と無縁だった小池さんがかみついてきたことに、不愉快極まりない思いをしている。今後、2人が歩み寄ることはないでしょう」
開催費用で小池氏から“イチャモン”をつけられた森氏の憤怒は凄まじく、親しい政治家には、
「あいつはオレに本気でケンカ売っているのか!」
と額に血管が浮き出んばかりにブチギレた。「森退治」に小池氏が打った攻めの一手は、ボディブローのような重く深いダメージを森氏に与えているようだ。