10月6日、「日本の台所」と呼ばれた築地市場が83年の歴史に幕を閉じた。しかし、10月11日の豊洲新市場の開場を控えた土壇場で、移転にケチをつけるトンデモない事態が次から次へと起きていた!
「豊洲市場は産地・出荷者、そして市場関係者、さらに消費者の皆さんなど全ての関係者の皆様に安心して利用していただける、すなわち安心・安全な市場として開場する条件を整えることができたと、このように考えております」
小池百合子東京都知事(66)が「安全宣言」を発したのは7月31日のこと。それまで先送りになってきた「市場移転問題」にいちおうの終止符が打たれたのも束の間、築地にも豊洲にも、看過できない重大な問題が勃発していたのだ。
「築地市場の広さを考えると、現時点で少なくとも数千匹以上のネズミが生息していると考えられます。中には『一万匹は下らない』と言う関係者もいるほど。そのネズミが閉場に伴い、すみかを追われて、大群となって流出する可能性があるのです」
そう警鐘を鳴らすのは、「ねずみ駆除協議会」の矢部辰男会長だ。矢部氏によると、築地市場から逃げ出したネズミはまず、エサが豊富なすぐ隣の築地場外市場にとどまる可能性が高いという。
「しかし、そこだけに密集するわけではなく、さらに分散していくでしょう。すみかの決まったドブネズミは半径50メートルくらいの範囲で活動しますが、新たなエサ場を求めて移動する場合、数キロ離れたところにまで行く能力はある。近隣では飲食店も多く、生ゴミが出やすい銀座あたりが危ないですね」(矢部氏)
大量のネズミが闊歩することになれば、日本一ハイソな街・銀座のイメージは失墜するに違いない。さらにネズミが運ぶ病原菌が阿鼻叫喚の大パニックをもたらすというのだ。
「最も懸念されるのは、食中毒の増加です。下水道などの汚い場所を走り回り、体にどんな菌やバクテリアが付着しているかわかりませんからね。他にも、ネズミの尿を媒介して感染する『レプトスピラ症』は、皮膚や口から菌がうつると、場合によっては黄疸を起こして死亡に至るケースもあります。また、かまれて感染する『鼠咬症』もやっかい。ネズミの口腔内に常在する病原体が体内に侵入して、高熱などの症状が起きます」(矢部氏)
市場を管理する東京都によれば、ネズミ駆除対策費に3500万円の予算を投入し、11月にかけて約4万枚の粘着シートと320キロの殺鼠剤などを仕掛ける予定だという。その成否いかんでは、“窮鼠”によるパンデミックが引き起こされかねないとも警鐘を鳴らすのだ。