「講演」がひととおり終わると、質疑応答に入った。ここで麻原死刑囚の「恍惚の拘禁生活」が明らかになる。
──現在の麻原の様子を教えてほしい。
森氏「麻原は現在、障害・重病などのために通常の社会生活を営むことができなくなっている。食事はライス、味噌汁、おかず類ですが、彼は一つ一つを食べることができず、ライスの丼におかずと味噌汁をいっしょくたに入れ、混ぜこぜにしたものをスプーンで口に運んでいる状態です。風呂は週に3、4回。でも自分1人では入れないばかりか、寝ながら汚物をタレ流し、体中が汚物まみれ。なので、風呂では(拘置所のスタッフが)モップを使って麻原の体を洗い、ホースの水をぶっかけて洗い流す方法を取っています。視力はほとんどなく、音も聞こえないような状態。もう廃人同然なんです」
──お父さんのことをどう思いますか。
アーチャリー「今でも会いたいと思っています」
「廃人同然」と形容された麻原死刑囚。だが、今も彼をあがめる「信者」は絶えない。
オウムの後継団体「アレフ」が拠点を置く東京・足立区の教団施設を訪ねた。チャイムを押しても反応はない。しかし建物内には明かりがともり、人がいるのが確認できる。施設近隣の工事現場の作業員は言う。
「たまに右翼団体が来て抗議活動をしているけど、ふだんは静か。信者もできるだけ目立たないようにしているんじゃないか」
アレフから分裂し、上祐史浩氏が代表を務める「ひかりの輪」の拠点は、世田谷区内のマンションにある。区民センターの外壁には脱会を促すメッセージの横断幕があり、定期的に抗議デモと学習会を開催。地域ぐるみで「反オウム」活動が活発に行われ、マンションそばには住民による「監視詰所」が設置されている。
「ここ数年、施設への若い人の出入りを見ることが増えました」
と不安な顔を見せるのは、近隣住民である。
「深夜に独り言を言いながら徘徊する怪しい人が何人かいるんです」
元オウム信者によれば、
「麻原信仰グループはアレフ以外に、全国に最低7つある。大阪、福岡、神奈川などで麻原をあがめる人間が集まり、中には銃の密売を生業にする連中までいる」
アレフを含む「残党」の間では近年、フェイスブックを中心に、SNSを使った勧誘活動が活発化し、大学生など若い信者が増えているという。社会部デスクが言う。
「オウム残党だとわかりづらい勧誘がほとんど。以前は『ヨガサークル』名義が多かったのが、『読書』『登山』『国内旅行』『自転車』などといったサークルに偽装するのが増えてきた」
モノ言わぬ「教祖」をヨソに、オウムは今もひそかに増殖している──。