昼食はだいたい麺類で済ませ、何もなければ5時には夕食。玄米菜食が中心で、これに味噌汁と漬物が基本。納豆、サバの味噌煮などを付ける場合もある。
「コンビニでバイトしていた頃、コンビニ弁当ばかり買っていく人たちを見て、何となく元気がないし、覇気のなさも感じて。実際、コンビニの廃棄弁当を食べていたら翌日だるいし、朝は大が出ない。これがずっと続いたら不機嫌な顔になるな、と」
そこで「食」という原点に立ち返り、金銭的、健康的、精神的に自分が納得できる食材を探求。見つかった答えが「粗食」だった。
「食文化というのは、自分の代わりに昔の人が実験台になって、何を食べればいいのかと試してくれたもの。だから結局、昔から食べていたものが最も体にいいんじゃないかと考えた」
季節によっては、野蒜や桑、野萱草、大葉などの野草が食卓に並ぶこともあるが、自炊が基本なため、1日の食事代は300円程度。
「夕食を早く食べるので、翌朝はたいてい空腹で目が覚める。この目覚めのすっきり感がハンパないです」
さて、そんな大原氏。先に触れたように、現在は台北市内から1時間ほどの、家賃1万5000円のアパートを借りて生活している。
「日本から持ってきたお金は20万円だけ。まだ仕事も見つかっていないし、手探りな状態ですが、介護ヘルパーを募集している。こっちでも日本同様に『隠居生活』ができるかどうかを、ぜひ試してみたいですね」
大原氏は月収7万円以上の生活を望んでおらず、これが自分に素直な生き方だと断言する。
「多くの人は『家を建てたい』『車が欲しい』とお金を稼ぎます。もちろん、それが本心から幸せだと思えればいいけれど、実はある種の強迫観念だったりする場合もある。『どうすれば自分が幸せか?』というのは他の誰でもなく、実は自分自身がいちばんよくわかっていること。僕は今、結果的に隠居状態になっていますが、毎日『生きている』ことを実感しているし、小さいことだけど、自分で選び取った毎日を実感しています。だから、お金がなくても文句がないのは当たり前です」
5年後10年後の将来を考えるよりも、
「今の僕が今日を一生懸命に生きたら、あとは明日の僕がそれをバトンタッチして明日のことはやってくれると思うんですね。だから自分を裏切らないように、今日を一生懸命生きる。そのためにはどれをやりたいかではなく、やりたくないものをどんどん消去する。で、残ったものから『これならまぁ、我慢できるかな』というものを選ぶ。そのほうがハードルが低いし、あとで後悔しませんから」
アベノミクス失敗により日本では中流層が崩壊、今後は一部の富裕層と貧困層との二極化に拍車がかかるのでは、と言われる。どんなに働いても生活水準が向上しないのなら、せめて心の豊かさを大事にしたい。そんな生き方も悪くないかもしれない。