GIシリーズ真っ盛り、錦秋の競馬界に驚愕の4億円的中男が現れた。夢の馬券を手中にしたのは公務員。しかも脱税を指摘されたことで、世間から大きな注目を浴びることになった。知りたいのはもちろん、いかなる予想手段を使ったのか。騒動の顛末を検証する。
まさに一攫千金の大当たりくじが、とんだ貧乏くじとなる騒動が起こった。
10月14日、大阪地検特捜部は所得税法違反で大阪府寝屋川市固定資産税課の中道一成前課長(46)を在宅起訴した。前課長は競馬で的中した約4億3000万円の払戻金を申告せず、6200万円の脱税を行っていたという。社会部記者が驚きを隠せない様子で語る。
「前課長は12年に『WIN5』(JRAが指定する5レースの1着を全て当てる馬券)を的中させ、約5600万円を獲得しています。そして2年後の14年に再びWIN5で、約2億3000万円を引き当てている。連続して千万、億万の大当たりを的中させているのはまさに奇跡、神ってると言うしかありません」
こうした競馬での巨額払戻金事件といえば、12年に同じく大阪の会社員に発覚した、3年間で30億1000万円をゲットしたケースが記憶に新しい。
「この会社員は市販されているパソコンの競馬予想ソフトを使って馬券を購入していました。といっても、単に予想ソフト任せにするのではなく、過去10年のレースをみずから分析し、そのデータを数値化。ソフトをカスタマイズしていました。過去の実績がない新馬戦や障害レースを除いた全レースで、単勝から3連単までさまざまな組み合わせを使った。1レースにつき何十から何百通りの幅で、大量に購入していました。つまり、レースや買い目を絞り込んで的中馬券を一本釣りするのではなく、逆に投網を投じるような大量買いをすることで、回収率を上げることに成功しています」(スポーツ紙レース部記者)
実際、約30億円の払戻金を得るために馬券に投じた金額は28億7000万円という、目もくらむ爆買い作戦だった。それでも「テラ銭」としてあらかじめ25%の税金が控除されている競馬で1億4000万円の実利を上げていたというから恐れ入る。だが税法上、競馬の払戻金は一時所得として扱われるため、この会社員には実利を大きく超える5億円以上の税金が課せられることになった。前出・社会部記者が解説する。
「通常、万馬券など大当たりした場合には、的中した馬券に投じた金額のみが経費として差し引かれますが、このケースでは1レースごとに大量かつシステマチックに馬券を購入するため、あくまで投資行為であり、外れ馬券も経費として認めるべきだと、裁判で争われました。その結果、15年5月に最高裁で、外れ馬券も経費と認める判決が下っています」
しかし今回のケースでは、非常にアナログな買い方でウルトラ万馬券を連続的中させていたという。前課長の代理人である中村和洋弁護士が説明する。
「馬券の予想法はごく普通です。我々と同じで、競馬新聞などを見て、このレースは荒れそうだからこの馬、堅そうだからこの馬、など何通りか予想していた。購入は基本的には100円ずつで、1回の購入額もそれほど多くなく、そんなに何口も買っていませんでした。競馬歴もそれほど長くなかったようです」
なんと、競馬新聞を見て勝ち馬を絞り込んでいたという。凡人でもマネできそうな馬券術ではないか。