実際に前課長が最初に「WIN5」を的中させた12年4月1日のレースを見てみよう。この日は、天皇賞・春の出走権を得るトライアルレースとなる産経大阪杯(GII)、そしてダービー卿CT(GIII)などが行われた。5つのレースの結果、1着馬の人気順はそれぞれ2番、7番、3番、6番、3番だった。
仮に前課長が全レースで1~7番人気馬を単純に購入した場合、7の5乗で1万6807口、つまり168万700円をつぎ込まなければならないことになる。競馬ライターの若月祐二氏が言う。
「通常、WIN5の場合、1レースで2~4頭ずつ選び、80口から140口程度で購入することが多い。私も予想で的中させた時は140口前後だった。堅そうなレースは1頭だけに抑えたり。ちなみに私はラッキーナンバーなども加味したりと、オカルト的な買い方も時には取り入れますが」
今年の秋華賞が行われた10月16日のWIN5は1番、1番、1番、1番、3番人気という人気サイドの組み合わせ。それでも約7万円の配当となっている。
次に、前課長が2度目の大当たりを手にした14年10月12日には、天皇賞・秋の前哨戦である毎日王冠(GII)があった。この日の結果は7番、1番、1番、13番、8番人気の順。京都11R・オパールSで13番人気馬ヘニーハウンドが穴をあけたため、払戻金は過去最高額(当時)となる約2億3200万円。的中はわずか2票のみだった。
「この前課長は競馬新聞で点数を絞っていたということですが、通常は5、6人ほどの予想者が印をつけている。当然、その予想者で重なっていない部分がありますが、そうした穴馬を何点か選んで組み合わせると、それなりの配当が出ると思います。例えば、13番人気のヘニーハウンドにしても、◎や▲を打った予想者がいたとか」(若月氏)
この予想術について、先の「30億円馬券事件」の主役で、現在はブログ「卍の投資競馬術」を運営する卍氏は、次のように読み解く。
「高配当を2度的中できたことは、相当な幸運だと思います。購入対象馬が1番人気から13番人気までバラけていますが、もし仮に13番人気までの馬を全通り買うと、投資金が3700万円も必要になるので、レースごとに何らかの基準で購入対象馬を選別、点数を絞っていたはずです。ちなみに、この2つのレースで購入された馬は、私が競馬予想で用いている『卍指数』がおおむね低い。大したものです。このことから、過去データをパソコンで分析するような予想方法ではなく、確かに競馬新聞などの情報を参考にする一般的な予想方法だと思いました」
はたして前課長には、誰もが使う競馬新聞から高額馬券を導き出す天賦の才があったのだろうか。
「購入する馬券はWIN5が基本です。それ以外には複勝や3連単も少し買っていたようです。最初にWIN5を当てた年はポツポツ買っていた程度ですが、2億3000万円を当てた年は毎週日曜日に買っていた。とはいえ、購入に何千万円も使っていたわけではありません。いわば、宝くじを2度当てたような偶然ではないでしょうか」(中村弁護士)