今週は「天皇賞・秋」が東京で行われる。海外GI馬の2頭、モーリスとエイシンヒカリが人気を分け合う形になりそうだが、過去5年で1番人気馬が勝利したのは昨年のラブリーデイのみ。今年も波乱含みの一戦!
登録の段階でフルゲート割れの15頭。それでも秋の天皇賞は、役者ぞろいだ。
昨年の年度代表馬であるモーリス、春季の海外遠征のあと、ここ一本に的をしぼり調整してきたエイシンヒカリの両雄を筆頭に、昨年の覇者ラブリーデイ、前哨戦の毎日王冠を制して意気上がるルージュバック、そしてGIドバイTを勝ったリアルスティール、安田記念を逃げ切って健在ぶりを示したロゴタイプなど、そうそうたる顔ぶれだ。
ファン必見、見応え満点の熱のこもった迫力ある競馬が繰り広げられること請け合い。ただ、これだけ顔ぶれがいいと、大きく荒れるような波乱の一戦にはなりにくいだろう。それでもモーリスにエイシンヒカリで“鉄板”という堅い決着になるかどうか。穴党としては、簡単に決まらないと見ている。
マイルでは“絶対”のモーリスが盾出走に踏み切ったのは、前走の札幌記念の好走。海外遠征帰りで調整期間が十分に取れず、満足のいく仕上がりではなかったのに、差のない2着と頑張ったからだ。札幌記念と盾は同じ2000メートル。この馬の並外れた能力をもってすれば、万全の出走態勢を敷く今回なら──の期待を陣営が持つのは当然だろう。
が、それでもこの馬のベストはマイル戦。2000メートルは若干長いのではないだろうか。強烈な瞬発力が武器ではなく、好位から抜け出し、スピードで押し切るタイプ。直線の長い東京が舞台でもあり、いずれかの馬に最後で差し切られる可能性が高い。
一方のエイシンヒカリは、今年いっぱいで種牡馬入りが内定しており、このあとの香港遠征で競走馬としてのピリオドを打つシナリオ。ここは4カ月半ぶりの実戦でもあり、むしろラストランに比重を置いているのではないだろうか。こちらは周知のとおり逃げ馬。府中の2000メートルは外枠不利。その外枠を引いた場合は、当然厳しい競馬を強いられることになる。
というわけで、他馬がつけいるスキは大いにある。
データをひもといてみよう。馬単が導入されて以降の過去14年間、その馬単で万馬券が飛び出たのは5回(馬連は2回)。この間、1番人気馬は6勝(2着3回)。2番人気馬は勝ちがなく、2着も4回。必ずしも人気サイドでは決まらないと言えそうだ。
年齢からいうと勢いある4歳、充実の5歳が優勢だが、特徴的には牝馬の活躍が目立つこと。ヘヴンリーロマンス、ウオッカ、ブエナビスタ‥‥。この14年間で連対を果たした牝馬は7頭。少ない出走頭数でこれだけの結果を残しているのだから、陣営としては自信を持って送り込んでいることがわかる。紅一点ルージュバックを軽視してはいけないことは確かだ。
有力どころの力量に大きな開きはない。
最も狙ってみたいのは、アンビシャスだ。こちらは、休み明けになる馬が多い中、この秋、一度使ったのは強みだろう。その前走、毎日王冠は、ルージュバックのクビ差2着。ルージュバックが今回2キロ斤量が増えるのに対し、こちらは1キロ増。逆転は十分可能と言っていいだろう。
アンビシャスは、デビュー時から将来を嘱望されていた素質馬で、周知のように新馬-特別を連勝。クラシック候補として名乗りを上げたが、体質的弱さがあって、3歳時は対一線級では分が悪かった。
しかし、4歳秋を迎え、そうした体質的な弱さも影を潜めてたくましく成長してきた。宝塚記念(16着)を使った春とは比べ物にならないほどだ。
「久々でイマイチの状態。道悪でもあり、折り合いを欠いたことで、はやばやと戦意喪失してしまった」
と、当時を振り返る音無調教師は、こう続ける。
「一度使ってさらにパワーアップ。東京コースは相性がよく、しまいを生かす競馬ができれば‥‥」
そう期待感たっぷりに話してくれた。
近親、一族にソーマレズ(GI凱旋門賞)、ラッシュラッシーズ(コロネーションSなどGI3勝)など活躍馬が多くいる良血。よほどの外枠を引かないかぎり、大きく狙ってみたい。