反対に、これら生活習慣病のワーストランキングで意外にも下位に落ち着いているのが、神奈川県、東京都、埼玉県などの首都圏だ。
「市町村単位での平均寿命の1位は、同じく長野県松川村だったのですが、実は2位には神奈川県川崎市の宮前区となっている。なぜかと驚いて調べたところ、街に適度な坂があるため、住民が日常的に運動をしていることがわかりました。地方では通勤も買い物も子供の送り迎えもマイカーを使うことが多いのに対し、電車やバスなどの公共の交通網を利用する首都圏のほうが、思ったよりも歩く距離が長くなるのです」(長田氏)
生活習慣病には食生活のみならず運動とセットで対処しなければならない。
矢野氏もこれに同意する。
「糖尿病死亡率が最も低い神奈川県では、健康ブームに敏感で、食事は野菜から食べるという野菜(ベジ)ファーストを実践。1日に歩く歩数も多く、意外にも喫煙率は日本一低い。また、見栄っ張りの県民性があるため、年をとってもかっこよく見られたい、いい体形を維持したいという意識が強いことも関係あるかもしれません。東京都も高血圧が少ないが、野菜摂取量と歩く歩数が多い。意外に地下鉄などの乗り換えなど階段を使うことが運動になっているようです」
高脂血症の患者数が最も少なかったのが沖縄県だが、別の不安材料を指摘するのは前出・長田氏だ。
「かつて長寿県の代名詞といえば沖縄県でした。長寿研究者の間で世界的にも注目され、今でも100歳以上のご長寿が多くいる。しかし、平均寿命の順位はどんどん下がり、12年には全国29位にまで落ち込んでしまったのです」
かつての「長寿の島」が全国平均値を下回る寿命となってしまった原因とは?
「気候がよく、粗食文化の沖縄は長く長寿県でしたが、戦後、アメリカの食文化が流入して以降は、下降の一途をたどっています。ハンバーガーやステーキなどを大人が食べるのはいいが、子供の頃から食べ続けたせいで栄養過多になってしまった。また、いまだにモノレール1本だけで鉄道がないため、車社会になってしまったのも問題です。こうした生活習慣が原因となって、働き盛りの世代がごっそり亡くなっている」(前出・長田氏)
もちろん「自分の県は上位だった」と安心するのはまだ早計だ。
「長野が長寿日本一、しかも寝たきりではなく“ピンピンコロリ”になったのは努力のたまもの。生活習慣病はそれぞれ、糖尿病は高血圧を、そして高血圧は糖尿病を悪化させるなど、全てが複合的に絡んでいます。生活習慣病の不安がある人は、塩分を減らし、炭水化物を取りすぎない、野菜中心のバランスのとれた食事と、適度な運動を取り入れることを念頭において生活を改善する努力が必要です」(松井氏)
今こそワースト県の教訓を他山の石とし、健康的な長寿生活を送るべし。