人間誰しも生まれ育った土地の食文化を大切にするもの。これが郷土愛だ。しかし、地域に根ざした驚きの「ローカル食生活」があなたの寿命をグンと縮めているかもしれない。厚生労働省のデータをもとに「3大生活習慣病」にかかりやすい都道府県のランキングを作成した。あなたの県は大丈夫か?
医学ジャーナリストの長田昭二氏が説明する。
「平均寿命の都道府県別データを見ると、生活習慣病が大きく関係していることがわかります。その最もいい例が長野県です。今でこそ、長寿県として知られていますが、昭和30年代には脳梗塞、脳出血などが多い短命県でした。しかし、その後、生活環境を改善することで長寿県へと生まれ変わったのです」
ちなみに、長野県の男性の平均寿命は80.88歳(2010年)、最下位は青森県で77.28歳(同)。りんごの生産量では2位長野県を大きくリードする青森県だが、こと生涯寿命では3.6歳も開きがあるのだ。
日本人の3大死因は、ガン、脳血管疾患(脳卒中、脳梗塞など)、心疾患(急性心筋梗塞など)となっている。この重大病の引き金となるのが、3大生活習慣病と言われる糖尿病、高血圧、高脂血症だ。中でも年々患者数が増え続け、今や全国の患者数が316万人を超える国民病となっているのが糖尿病である。
「糖尿病自体は痛くもかゆくもありませんが、放っておけば脳梗塞、心筋梗塞、狭心症など全身にさまざまな合併症を引き起こす原因になります。腎症が悪化すれば透析治療が必要となるほか、ガンに罹患するリスクも高くなります」(前出・長田氏)
「血糖値が120をちょっと超えただけ」などタカをくくることなかれ、重大病は日々ひそかに忍び寄っているのだ。
厚生労働省が15年に行った「主な死因の死亡数・死亡率(人口10万対)」の調査から、都道府県別「糖尿病死亡率」のワーストランキングで1位になったのが、「日本一の短命県」としてあげた青森県なのだ。
青森県といえば、せんべい汁、けの汁、じゃっぱ汁などのB級グルメで知られ、味噌汁好きが多いことで知られる。三度の食事に味噌汁とおしんこを欠かさず、しょっぱいものが好きな県民性だ。他にも、名物煮干しだしのラーメンを朝から御飯つきで食べる「朝ラー」、赤飯や納豆に砂糖を入れるという独特な食文化を持っている。
県民性に詳しいナンバーワン戦略研究所・矢野新一所長が説明する。
「青森は日本でいちばんテレビを長く見ている運動嫌いの県でもあります。しかも、カップラーメンの消費量が1位。実際、肥満の指標になるBMI値は長崎県に次いで全国で2番目の高さになっています。さらに喫煙率も全国2位、これだけそろえば糖尿病死亡率が全国1位でも不思議ではありません」
今年2月には、「短命」を逆手に取り、朝から酒蔵巡り、市内のラーメン店をはしごするという「短命県体験ツアー」が地元有志によって企画されたほど。
医学ジャーナリストの松井宏夫氏が解説する。
「納豆に砂糖よりむしろ、朝ラーメンが問題です。ラーメンは炭水化物(糖質)のほか、汁まで飲めば1杯6~7グラムの塩分が入っています。日本では一般的に1日の食塩摂取量が10グラム(高血圧患者は6グラム)という制限があり、ラーメン1杯だけで1日の3分の2の塩分を摂取してしまうことになる。ですから、ラーメンを食べるなら汁を残す、またはタンメンなど野菜を多めに取ることが必要になります。さらに、食後は横にならず15分くらいウオーキングすることで血糖値が上がるのを抑えられます」
なかなか止められない食習慣でも、一味加えれば生活は改善されるのだ。