今年の冬は寒くなる、と言われています。寒くなると布団から出たくなくなり、「もう少し寝よう」と二度寝をしてしまいますが、二度寝をするよりも、一発で起きて気合いを入れたほうが仕事ははかどります。
気合いを入れたい朝、脳を目覚めさせるのに「コーヒー」や「お茶」を飲む人は少なくないでしょう。
コーヒーもお茶も、カフェインが含まれ、カフェインには目を覚ます興奮作用や自律神経の働きを強める機能、運動能力を高める作用などがあります。
では、朝起きて飲むのに適しているのはコーヒーとお茶のどちらでしょうか。
どちらかといえば、お茶よりコーヒーのほうがスッキリ目覚める、そんなイメージを持つ人もいますが、それは一種の誤解であり、CMなどの影響からです。
今から40年以上前、コーヒーのCMがはやりました。代表的なコピーとしては「上質を知る人、違いがわかる男」などのフレーズで大ヒット。さらには「ティファニーで朝食を」など映画の影響もあり、朝にコーヒーを飲むのが日本の食卓でも一般的になりました。
以来、日本の朝にコーヒーが根づいた感がありますが、実はコーヒーよりお茶のほうがカフェインは強く、脳の覚醒に効果があり、目覚めの効能も高いのです。
このとおり、お茶にはコーヒーに勝るとも劣らない効果があるのですが、まだ研究結果がそろっていません。いずれは研究が進み、お茶の効能が人々に伝わるだろうと感じています。
また、お茶のカフェインが強いことを考えると、夜寝る前に飲むなら「お茶よりコーヒー」となります。夜はレギュラーコーヒーよりカフェインの少ないエスプレッソ系のコーヒーだと眠りが妨げられませんが、お茶でも「ハーブティー」などカフェインが弱いものもあり、銘柄ごとにくふうをすればいいのです。
さらに言えば、眠ってはいけない状況の時は「コーヒーよりお茶」ですが、お茶には「寝られるお茶」と「寝られないお茶」があります。低温で入れたぬるいお茶は「いい煎茶」のような甘い味わいがしますが、ポリフェノールが多くカフェインが少ないため、覚醒効果は少なめです。一方、熱いお湯で入れたお茶はカフェインが多く出るため寝られなくなりますが、朝に目覚めたいなら「熱いお茶」となります。同じ論理で、ホットコーヒーよりアイスコーヒーのほうがカフェインは少なくなります。
ただし、コーヒーには「ガンの予防」などさまざまな効果があることもわかっています。お茶に含まれるカテキンやテアニンよりも、コーヒーに含まれるクロルゲンのほうが、動脈硬化やガンを予防すると言われており、コーヒーも飲んだほうがいいのですが、日常的に考えると「お茶よりコーヒー」というわけではなく、「好きなほうを飲めばいい」と思います。
コーヒーを覚醒効果で分けると「レギュラー」か「エスプレッソ」になります。豆がヘビーローストであるエスプレッソのほうが苦くて濃いですが、カフェインは少なく、朝に目覚めたいのなら、フレンチローストやシティローストであるレギュラーコーヒーのほうが効果的です。
対して休憩時や食後に飲むならエスプレッソとなりますが、コーヒーの欠点は「砂糖やミルク」が必要な点です。砂糖を入れずに飲める日本茶は「いいとこどり」かもしれません。
また、インスタントコーヒーは昔に比べて品質が上がっており、微妙な味の差はあるにせよ、健康成分については普通のコーヒーを飲むのと同じです。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。