男子ゴルフ通算113勝を誇るレジェンドに、第一線を退く日が近づいてきた。今季の戦いを終えて出てきた言葉は、「燃える男」にふさわしくない弱音。ボロボロの体が悲鳴を上げ、賞金も稼げない苦闘の日々に、とうとう「決断」が下されるというのだが──。
11月18日、男子ツアー「ダンロップフェニックス」2日目。尾崎将司(69)は腰痛に耐えかね、9ホールで途中棄権した。スポーツ紙デスクが振り返る。
「ジャンボにとって今季のラストゲームでしたが、雨でコンディションが悪く、1番のティーショットから冴えなかった。ラウンド後は『(試合を)やっててつまんないわな。練習場だと調子がいいから(試合に)行ってみようかと思うけど』と、弱気なグチばかりでした」
その原因を、尾崎は次のように語ったという。
「(坐骨神経痛のため)神経圧迫の状態が十数年も続いている。下半身が衰えて足の力がなくなって、腰に負担がきて。(腰痛対策は)体を鍛えて強くするしかないが、年齢的に難しい。トレーニングを積んだら積んだで、副作用で違うところが痛くなるし」
そして尾崎は最後に、しんみりと言った。
「いずれにしても、重大な局面に立たされている。オフにゆっくりと考えるよ」
まさにレギュラーツアー撤退、第一線から退くことをほのめかす爆弾発言である。
何しろ尾崎は13年4月の「つるやオープン」で30万8400円を手にして以降、現在まで3年半にわたり、獲得賞金はゼロ。永久シード権を持ちながら、52戦続けて予選落ちと棄権を繰り返す屈辱を味わっているのだ。スポーツ紙ゴルフ担当記者が当時の取材メモを見ながら振り返る。
「『つるやオープン』は51位タイながら、66歳で新たな偉業を達成した試合です。初日に1イーグル、9バーディー、2ボギーの『62』をマークし、男子レギュラーツアー史上初となるエージシュート。圧巻は、足を引きずりながらの17番パー5。ピン奥7メートルに2オンさせ、きっちりと沈めると、トレードマークの『コブラガッツポーズ』が出ました」
ゴルフジャーナリストの武藤一彦氏が話す。
「ジャンボは常に『ゴルフは飛距離』と言い続けてきた。『(ドライバーが)少しぐらい曲がろうが有利に戦える』と。飛距離の追求がジャンボのスタイルでした」
13年は右肩の筋力アップと柔軟性を図り、ドライバーのシャフトを1インチ延長。偉業達成後にはこんな言葉を残していた。
「ティーショットでアドバンテージを取れてくると、セカンドのクラブも短くなるし、グリーンを外すこともなくなる。そうなれば、あとはパットしだいだよ」
もちろん、群がる取材陣に「エージシュートなんか目指してるわけじゃないっつうの」と、ジャンボ節も忘れていなかった。
だが、翌週の「中日クラウンズ」は腰痛のため、初日に棄権。そして、それから3年半余り──。
ゴルフ場開発や不動産投資の失敗で巨額の借金を抱え、05年に民事再生手続きを申請して経済的に破綻した尾崎は、どうやって生活を維持しているのか。