日本最高のスラッガーを襲った最大のピンチ。アメリカで3度の移籍を経験してきた松井秀喜(38)も、今回の戦力外通告はこたえたに違いない。何より問題なのは、評価急落の一因に、松井自身が気づいていないことなのだが‥‥。
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7月25日、松井がレイズから「クビ」を宣告された時点の成績は、打率1割4分7厘、2本塁打、7打点。
「何しろ松井の打撃は、ヤマカンに頼るばかりで」
松井を間近で見てきた球団関係者はこう言って、さらに厳しい口調で解説する。
「ヤマを張って、直球のタイミングでしか待っていない。だから変化球についていけないんですよ。初球をボールや変化球から入られると、ぶざまな空振りをする場面が目立ちました」
松井の異変はエンゼルス時代から指摘されていた。
「直球を捕らえられなくなったり、以前の松井なら安打や本塁打にした甘い球をファウルしたり。ネット裏のスコアラーやスカウトは『どうしたんだ。松井は目が悪いんじゃないか』と首をかしげていました」(米メディア関係者)
稀代のスラッガーも40歳間近。やはり衰えなのか。この米メディア関係者は、松井の「肉体の変化」に気づいていた。
「ロッカー室で裸を見たら、筋肉はゲッソリとそげ落ちてスーッと細いんです」
実はこれには、松井を「指導」する個人トレーナーが深く関係していたのである。この人物は、大阪府内で整骨院を開業するK氏。右肩に故障を抱える阪神・金本知憲(44)の治療を担当するなど、球界では知られた人物だ。松井とは、膝手術後の08年に出会い、翌09年から専属トレーナーとして治療に当たってきた。
「患部には触らず、筋肉や関節に圧をかけてバランスを整え、膝が動くようにするという無痛療法です。この方法でK氏が金本の肩を改善させたり、守備ができるまでに松井の膝を治したのは事実。だから松井も心酔しきっています。ただ問題は、K氏が『ウエートトレーニング禁止令』を出していること。K氏と知り合って以降、松井はエアロバイクをこぐ以外、ウエートルームに入っていない。一度、コッソリとウエートをやったのがバレて、『それならもうキミの治療はやらん』と一喝された」(スポーツ紙デスク)
脱ウエートによる「痩せ細り」。その弊害を前出・球団関係者はこう話す。
「歴代の名選手に聞くと、37、38歳は成績を落とす過渡期だという。それをどうやって乗り越えたか。生活パターンを規則正しく変え、ウエートを増やした、という答えがほとんどでした。年齢とともに落ちる筋力を維持するためにはウエートをやらなければならない。が、松井はその逆をいっている。あれだけ筋肉が落ちて体が軽くなれば、膝への負担も軽減されるから、そりゃ走れるようになるでしょう。その代わり、スイングスピードは落ち、キレもなくなる」
今は打撃練習ですら柵越えはゼロに等しく、他球団のスカウトは「松井の練習はひどい」と口をそろえる。
それでも膝を治してくれたのはK氏だと、洗脳的とも言える盲信ぶりを見せる松井。さらにはこんな光景まで─。
「キャンプでは右翼席奥の打撃ケージにK氏が入ってきて、まるで打撃コーチみたいにケージの後ろに立ち、ビデオに撮りながらアドバイスをしていた。松井はそれを『ウンウン』と聞いていたよ。これにはアメリカ人記者も『なぜ治療師が打撃フォームに口出しするんだ?
報道陣が見ているところでやること自体、非常識だし』と驚いた」(米在住ジャーナリスト)
前出・デスクも言う。
「オフの自主トレもK氏とベッタリ。K氏はトレーニングメニューを作って走らせたり、ビデオを回して打撃のアドバイスも。治療師としての腕は一級かもしれませんが、打撃に関して、K氏はド素人。『あれはおかしいだろ』と、報道陣は皆、言いますよ。通常、トレーニングコーチと治療する人は別。だけどK氏は打撃コーチも兼ねている」
もはや暴走とも言える「洗脳指導」。それでも結果が出ていればいいが、現実は見てのとおりだ。「松井は守れて走れて打てる、という姿を理想としている。でも今のメジャーが松井に求めるのは本塁打であり、ここぞという時の勝負強さ。代打かDHがメジャーで生き残る道なのに、松井は外野手に戻ろうとして選択を誤った。自由契約にはなったものの、スカウトたちは、長打も打てず守備要員にもならない松井に『何の魅力もない』と言っています」(メジャー関係者)
こうした声に耳を傾けないかぎり、松井の再浮上はないのだ。