世界を激震させた米大統領選から約2カ月、ついにトランプ大統領が始動した。覇権を争う中国に対し、「暴言王」は就任前から強硬姿勢で咆哮。大国同士の不仲で大きく入れ代わる「カネ・軍事力・領土」──アジア各国はどちらを選ぶのか“踏み絵”を迫られる事態に直面。新アジア同盟地図から警報が鳴り響く!
「私たちは再びアメリカを強くする。再びアメリカを豊かにする。再びアメリカを誇り高い国にする!」
1月20日(現地時間)に行われた大統領就任式典後の演説で、こう高らかに宣言したのは、第45代アメリカ大統領、ドナルド・トランプ氏(70)だ。
大物アーティストの出演拒否や、民主党議員のボイコットが続出する異例事態の中での就任。「トランプ以前」の世界では、国境を越えたヒト・モノ・カネの移動を自由にするグローバリズムが席巻、その象徴が「TPP」だった。だがトランプ氏は「TPP離脱」を正式表明。これまでと180度違う価値観に基づく時代が始まったのだ。
就任前の16日には、米紙のインタビューに、
「NATOは時代遅れ」
と答えたトランプ氏。アメリカと世界の「同盟地図」が塗り替えられるようだが、気になるのは日本を含めた周辺国の「同盟地図」だろう。軍事ジャーナリストの潮匡人氏が解説する。
「オバマ時代はアジア重視のリバランス政策でした。未知数のトランプ氏は正反対の方向に舵を切り、日本周辺地域の安全保障を不安定にするおそれがある」
トランプ氏のブレーンの一人、ピーター・ナヴァロ氏は対中強硬派である。その著書「米中もし戦わば」(文藝春秋)には「戦争の地政学」というサブタイトルが付けられ、防衛省現役組必読の一冊と言われている。米中緊張化で、日本に最も関係ある案件といえば「尖閣問題」。オバマ時代には中国の顔を見てきたアメリカは、日本を助けるのか。
「尖閣諸島はアメリカの国益にダイレクトに結び付かず、日米同盟を根拠にアメリカ軍が軍事的作戦行動をとるとは思えません」(前出・潮氏)
日本は「軍事的自立」を求められる様相だが、その自衛隊の最高指揮権を持つ安倍晋三総理(62)はなぜかご機嫌なのだという。政治部記者が明かす。
「昨年11月、各国に先駆けてトランプ氏と会談しました。総理はそのままペルーで開かれたAPECに出席すると、各国首脳から『トランプ氏はどういう人物だ?』と質問攻めに。気分が乗った安倍総理は『俺ってついてるなー』と側近に笑みを浮かべたそうです」
しかし、トランプ氏の視線は安倍総理を通り越して台湾に向いている。「台湾」こそ、米中関係の火薬庫。「パックス・チャイナ 中華帝国の野望」(講談社現代新書)の著者でジャーナリストの近藤大介氏は言う。
「1972年のニクソン大統領電撃訪中から、国交正常化まで7年もの歳月がかかったのは、『台湾をどう扱うか』の一点で、米中が合意できなかったからです。結局、台湾独立を支持せず、中国が主張する『一つの中国』を尊重する、ということで落ち着きました」
対してトランプ氏は「一つの中国」政策の終焉を示唆。昨年12月には台湾の蔡英文総統(60)と電話会談を実現した。台湾代表が就任式に出発したことに、中国は猛反発している。