当然ながら、台湾と中国の関係も「危険水域」に突入。中国政府高官に通じるジャーナリストが話す。
「昨年12月25日、中国軍の空母『遼寧』などの軍艦8隻が沖縄の宮古海峡を越えて太平洋に進出し、東シナ海に入りました。その後も中国艦隊は南シナ海、台湾海峡を航行。アメリカと距離を縮める台湾に対しての、明らかな威嚇行動です」
昨年5月に台湾独立を志向する民主進歩党の蔡政権が誕生後、台中関係は悪化の一途をたどっている。中国政府は「1つの中国」を明言しない蔡総統に不満を持ち、関係各所に台湾旅行に行かないよう“指示”。観光業に打撃を与えている。一方で台湾の軍事強化を恐れ、一昨年にアメリカ企業が台湾に護衛艦や対戦車ミサイルなどを売却した際には、アメリカの企業に対して「制裁実施」を明言しているほど。
この状況下で在沖縄米軍が台湾移転となれば、移転準備が整う前に、中国が台湾「制圧」に向けて動きだすシナリオも想定できる。潮氏はこう言う。
「制圧の定義にもよりますが、ミサイル攻撃をするだけの方法であれば、現時点で十分の能力を持ち、本気で使えば台湾は壊滅的被害を受けます。また、台湾海峡に向けて撃ち、海に着水させるだけでも十分な威嚇効果になります」
制空権を制するのも、中国軍にとっては難しいことではないという。潮氏がさらに続ける。
「現段階では中国軍が有利と言えます。台湾空軍の戦闘機より性能の高い戦闘機を倍以上持っており、力の差は歴然としています」
中国の侵攻を前にして、日本や台湾はどう立ち向かうべきなのか。西村氏はこう断じた。
「『日台米トライアングル』で封じ込めればいいのです。昨年2月、在米台湾人研究者がアメリカの軍事専門誌『ナショナル・インタレスト』に『台湾海峡の次の主役は日本か』という論文を寄稿しました。日台関係はかつてないほど親密になっている。日本が主役になることで、アジアの平和と安定が保たれます。主役になるとは、日台軍事協定の締結を進め、日米安保と連動させること。そして『日台米トライアングル』の軍事同盟を作るのです。この同盟を日本がリードする。トランプ大統領は日本に自立と主導権を握ることを求めています。安倍晋三総理(62)は動くでしょう」
前出・潮氏も追随する。
「中国が避けたいのは、日台米の協力体制。台湾だけなら数の上で勝っていますが、3カ国の軍隊が集まると、逆転されて厳しい立場に追い込まれます」
トライアングルに包囲された中国が、自暴自棄になって「暴走」しなければいいのだが──。