「民間人の立場で許される範囲のものと考え、人助けという思いで行ってきた」
先の予算委員会で、組織的あっせんの中心人物とされる嶋貫氏はこう弁明したが、とても罪の意識は感じられなかった。そこには、役人特有の論理が働いているからだと推測できる。
ある文科省OBは筆者の前で、こんな本音を漏らしていた。
「いくら一流企業などといっても、公平な国家試験にもパスせずに、出身大学名や面接重視で採用された民間の会社員よりも、俺たちのほうがはるかに優秀だ。にもかかわらず、給料は民間よりも低い。せめて退職後に天下りとワタリを繰り返して、そのつどしっかり退職金をもらわないと、生涯賃金で追い抜けないじゃないか」
役人の間に、この“生涯賃金”という、よこしまな考えと民間のサラリーマンへのコンプレックスが深く根ざしているのも、天下りが横行し続ける要因ではないだろうか。
国会でこの問題をいち早く取り上げ、追及の急先鋒に立つ小川淳也衆院議員(民進党)は言う。
「天下りのあっせんについては姑息かつ巧妙と言わざるをえません」
天下りの仲介役を務めていた文科省OBが代表を務める「文教フォーラム」は、今年度内に解散する意向を示したが、
「法人の廃止は、役所にとって不利な情報を隠蔽するための隠れミノにしか見えません。問題が発覚したことで、即座に解散を決定するということは、そもそも国民や行政にとって必要な団体だったのでしょうか? 役所のOBを養うために、必要のない法人を作って、必要のない書籍を作って、税金をタレ流す構図を作り上げてきたのです。これは文科省に限らず、全省に言えることです」
こう話す小川議員は、今後も天下り問題を厳しく追及していく構えだ。
「民主党政権の初年度(10年度)には、前年度に比べ、国家公務員の天下り件数は半減しました。しかし、安倍政権になってからは増加の一途をたどり、15年度には倍以上にまで膨らんでいます。与党政権と官僚の“親和性”は高いと言わざるをえません。お手盛りの内部調査で済ませては、納税者である国民が浮かばれません」
再発防止のため、天下り規制に罰則を設ける動きが出始めているが、それだけでは生ぬるい。より抜本的な改革が求められている。
朝倉秀雄+週刊アサヒ芸能特別取材班