「月2回で1000万円」──。天下り先の“激ウマ”な顧問報酬が暴かれると、国会のセンセイたちも「おー」とどよめいた。だが、文科省の組織的な「再就職先あっせん」は最近に始まったことではない。国会議員の秘書を17年間務めた作家の朝倉秀雄氏が私欲に走る官僚たちの天下り現場を告発する。
文科省OBで元高等教育局長の吉田大輔氏が、一昨年の退官後わずか2カ月で早稲田大学教授に就任。しかし、その裏では、現職の官僚が再就職のあっせんに手を染めていた事実が発覚し、退職に追い込まれた。
「吉田氏は年収約1400万円という待遇で大学に迎え入れられました。08年に施行された改正国家公務員法は、現職の職員が他の職員やOBの人事にまつわる情報提供を行うことや、在職中の求職活動を厳しく規制しています。にもかかわらず、人事課の職員が吉田氏と一緒に履歴書を作成し、さらに面接日の日程調整までお膳立てしていたのです」(社会部記者)
こうした天下りあっせんを外部から仕切っていた人物が、同省人事課OBの嶋貫和男氏だ。自身も退職後の09年に「教職員生涯福祉財団」に天下り、14年1月には「文教協会」の参与に転じた。その後、分室として立ち上げた「文教フォーラム」を拠点にして、あっせん工作に奔走していたという。また、嶋貫氏は保険会社の顧問も務めており、その待遇について、「月2日勤務で年収1000万円」という異様な実態が、国会の予算委員会の質疑で明らかになった。
文科省は「文教フォーラム」事務所の家賃を負担していた「文教協会」に対し、16年度には教員免許管理システムの補助金として5070万円、調査研究委託費391万円、書籍などの代金495万円を支出。天下りあっせんの見返りとも受け取れる。
筆者は94年から17年間にわたって8名の国会議員の政策秘書を務めた。中には「文教族」の議員もいて、その縁で、多くの文科省の幹部職員や天下りOBを見てきた。あるノンキャリアの職員から、こんな愚痴を聞いたことがある。
「うちの省は天下り先に恵まれているとは言えませんね。国家公務員I種試験(現在は国家総合職試験)に合格して入省したキャリアでさえ、天下り先を見つけるのに苦労しています。経済官庁のOBならば、企業側は天下りを迎えることによって、さまざまなメリットを享受できます。しかし文科省には、そうした企業とのつながりが少ない。せいぜい学部新設の許認可や各種の補助金を必要とする大学くらいしかないんです」
こうした事情も影響していたのか、筆者は組織的な天下り現場に幾度も遭遇した。実例をあげて告発したい。
都内に本部を置くH大学の顧問の座は、文科省OBの「指定席」と言われていた。02年からそのポストに就いていたA氏は、役人時代から「キャリア」を自称していたが、その経歴は怪しいものだった。
「評判はあまりよくなかったですね。自己主張が強いだけで、本省から追い出され、地方大学の事務局を転々としていましたから」
ある後輩職員がこう語っていたように、かなりクセのある人物だったが、何とか文科省人事課の推薦を取り付けて顧問に納まった。しかし3年後、筆者にこう訴えてきたのだ。
「実は文科省の人事課長が新しく退職する人間を送り込みたいようで、H大学に圧力をかけて、私を辞めさせようとしている。後輩のくせにフザけたヤツだ」
実はこのポストは、3年間で後進の退職者に譲るという不文律があった。しかし彼は自身の天下りと“ルール破り”を棚に上げ、こうまくしたてたのだ。
「文教族のWセンセイに頼んで、人事課長を呼び出してもらいたい。『世間の批判を浴びる天下りのあっせんなんかやるんじゃない』とどなりつけてくれないか」
虫がよすぎる話に、開いた口がふさがらなかった。
朝倉秀雄+週刊アサヒ芸能特別取材班