大不振の柔道で唯一の金メダルを獲得した女子57キロ級の松本薫(24)。彗星のごとく現れた救世主の特異なファイトスタイルをマスコミは「野獣」「野性」と報じたが、原点はそう称されるにふさわしいモノにあった。
スポーツ紙五輪担当記者はこう話す。
「彼女が金メダルを獲っていなかったら、64年の東京五輪で柔道が正式種目になって以来初の、男女合わせてゼロという前代未聞の醜態をさらすところでした。原因は指導者の問題などいろいろありますが、『国を背負っている』という意識が強すぎるあまり、萎縮してしまう選手が目立ちました。その点、松本は周囲も驚く天然ぶり‥‥いや、超マイペースでしたね」
その心技体はどこで磨かれたのか。スポーツライターが「松本伝説」を明かす。
「あの戦いぶりや風貌から、変わり者だと言われる松本は数年前、野生のハクビシンを捕獲し、1人暮らしの自室で飼うようになったそうです」
ハクビシンはジャコウネコ科の哺乳動物で、タヌキかアライグマに似た顔に、イタチのような胴体。中国では食材として使用されるが、かつてSARS(重症急性呼吸器症候群)が大流行した際には、ウイルスを媒介しているのではとの疑惑を持たれ、流通禁止になったことも。スポーツライターが続ける。
「ところが、このハクビシンが凶暴で言うことを聞かない。餌やりをしようにも暴れ回るものだから、まさに格闘の連続。ハクビシンのスピードについていくうち、あのすばやく猛烈な野獣的ファイトスタイルと強靱な足腰が出来上がったと言われます。さらに、捕獲すべく動きを追ううち、自然にハクビシンをまねたような、スピード感あふれる動きになったとも‥‥」
原点ここにあり、である。そう言われれば、彼女の顔もハクビシンっぽく見えてくるような‥‥。
そんな彼女の規格外エピソードは、枚挙にいとまがない。親しい関係者はこんなエピソードを明かす。
「彼女は試合直前に『いっくぞー』と大声を出すのはまだしも、『へんし〜ん』と叫ぶことがあります。昨年2月のグランプリ・デュッセルドルフでも、そんなことがありました。本人に聞くと『別に理由はないよ』と答えますが、今回の五輪の決勝直前、目つきがさらに鋭く野性味を帯びたことも、この流れだと思います」
実は過去に、ボーッと道を歩いていて、自動車との衝突事故に何度かあっているそうだが、クルッと回っての動物的な受け身により、事なきを得ているという。これもハクビシンから習得した動きなのかも。
「今年初め、世界最大の格闘技団体『UFC』の存在を聞かされると当時のバンタム級王者、ドミニク・クルーズの映像を細かくチェック。『うん、勝てる!』と言ったあとで女子部門がないことを知るや、『私は柔道が世界でいちばんすばらしいと思っているから興味ないわ』と一転。まるで読めない心もハクビシン譲りでしょうか」(前出・五輪担当記者)
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