朝倉コーチがまだ現役だった、数年前の沖縄キャンプの夜。そこで2人の確執は生まれた。スポーツライターが回想する。
「キャンプ中に例年、一、二軍の投手陣が全員集まる食事会が行われますが、二次会は主軸とベテランだけという不文律があったんです。でも、当時まだ若造だった大野は、そのキャラクターが山本昌氏(51)らに気に入られ、『お前はおもしろいな。二次会に来い』と呼ばれた。しかし朝倉コーチは、遠慮せずノコノコとついてきた大野の態度がカンに触って、『お前が何でここにいるんだ。調子に乗るな。わきまえろ』などと、延々と絡んで説教。それ以来、2人はほとんど口をきくこともなくなりました」
その確執が導火線となり、今回のノック事件でチーム内の新たな遺恨へと発展。とはいえ、朝倉コーチが選手会長でもある左腕エースに対し、ここまで強気に出るのはなぜか。
「こわもての森監督に対しては選手だけでなく、コーチ陣もビクビクして神経を使っていますが、森監督のお気に入りの朝倉コーチだけは、監督の威厳をカサに着て傍若無人にふるまっている。何をやっても許されるという雰囲気があるんです。朝倉コーチはオラオラ系の性格で、上下関係にうるさい超体育会系型なので、なおさら『俺に逆らうとこうなるぞ』みたいなパワーを見せたがるんですよ」(球団関係者)
内紛劇についてコメントを求められた森監督は「俺には報告がないが、だいたいの予想はつく」と、まったく問題視せず静観の構えを見せた。それも覚えめでたい朝倉コーチの言動ゆえ。本来ならば逆らった選手側が処罰されるものだが、今回は朝倉コーチによる「パワハラ」だけに、処罰のしようもなかったのかもしれない。
選手間では賛否両論が渦巻く。ある主力投手は「大野はアホでしょう。コーチに逆らうのはどうかしている」と大野を批判。しかし一方で、ベテラン野手の一人が「朝倉コーチは大人気ない。何でみんなが見ている前であんな行動をするのか」と言えば、他の選手からも「あそこまでやったらパワハラ。コーチがチームの雰囲気を悪くするなんて考えられない」という声が上がったのだ。前出・スポーツライターは、開幕を前にしての危機感を口にする。
「大野と朝倉コーチの遺恨は、単なる2人だけの問題ではなくなるでしょう。大野を擁護した選手と朝倉コーチを支持した選手で今後、チーム内が真っ二つに分裂する危険性がある。昨年は谷繁前監督に統率力がなく、途中解任されてチームはバラバラになりましたが、すでに今年もそうなる方向に向かっていますね」
昨年は12球団で唯一、2桁勝利投手がいなかった中日投手陣。最下位脱出にはその立て直しが最大命題のはずだが、開幕投手の最有力である大野とコーチが衝突しているようでは‥‥。
中日はチーム分裂崩壊の時限爆弾を抱えたまま、開幕を迎えることになる。