一難去ってまた一難、とはまさにこのことだ。中日ドラゴンズのキャンプ地でエース左腕とコーチがケンカ激突する「事件」が衆人環視の中で勃発。瞬く間に波紋が広がり、開幕前にチーム分裂崩壊のカウントダウンが始まったのである。
戦力補強や谷繁元信前監督(46)の電撃解任などを巡ってチームの火種となっていた落合博満前GM(63)が、1月いっぱいで退任。森繁和監督(62)の下、新たなスタートを切ったかと思われたとたん、トラブルは起きた。
それは2月14日の沖縄・北谷キャンプのサブグラウンドでの出来事だった。二軍担当ながら一軍に帯同している朝倉健太二軍投手コーチ(35)が、投手陣にノックをしていた。そこにピッチングを終えたエース左腕の大野雄大(28)が「お願いします!」と加わろうとする。ところが朝倉コーチは手で払いのけるしぐさをしながら「お前、誰? 入らないでいい!」と一喝。ノックに入ることを許さなかったのだ。
現場は凍りつき、大野は表情を一変させて退場。選手はもちろんのこと、ファンや報道陣も見ている前で恥をかかされた怒りを鎮めるかのように、サブグラウンドの隣にある投手控え室のプレハブ小屋に約1時間も閉じこもった。大野はその後、もう一度サブグラウンドに戻ってノックを受けたが、ノッカーは朝倉コーチでなく近藤真市投手コーチ(48)。そこには異様な空気が流れていた。
「こういう内紛劇は普通、報道陣が見てないところで起きるものですが、事前に予期していた番記者たちが全員集合していた目の前で起きた。キャンプでは毎日、報道陣に練習メニューのプリントが配られますが、この日は大野だけが空欄になっていたので、『これは何かある』と、大野の練習をマークしていたんです」(名古屋のメディア関係者)
実は両者の衝突には、3日前の伏線があった。球団関係者が明かす。
「その日、投手陣は全員が二軍のキャンプ地、読谷でプールトレーニングをしなければならなかったのですが、大野と田島慎二(27)の2人が来なかったんです。それで朝倉コーチが『サボりだ』と激怒した」
朝倉コーチは翌日、罰として大野と田島に特守を命じた。田島はヒーヒー言いながら「罰」をこなしたが、大野は反抗したのである。球団関係者が続ける。
「チーム内には、ピッチングをしなかった選手はクールダウンを兼ねたプールトレは免除になる、というルールがあるそうなんです。田島はサボリでしたが、大野は『サボッていない。ピッチングをしていない日はプールトレ免除のルールに従っただけ。特守をさせられるのはおかしい』と反抗したんです。これに朝倉コーチの怒りが沸騰。『あ、そう。ならお前のメニューは白紙にするから、自分で勝手にやれよ!』となって、ノックに入れなかったのが真相のようです」
まるで子供のケンカである。翌日、スポーツ各紙が「中日に内紛」と大々的にこの事件を報道したが、首脳陣は「なぜこんなどうでもいい話を書くんだ!」と激怒。報道陣にこれ以上この問題をつつかれないのと同時に、最悪になったチーム内の空気を一掃するために、急遽、朝倉コーチのノックを大野が受けるという「和解劇」が演出された。事実、各社は和解と報じたが、これは見せかけ、偽装だったという。
「2人は話もせず、目も合わせていない。和解なんてしてないですよ。そもそも2人の確執はチーム内外では有名でしたから」(前出・名古屋のメディア関係者)