「新しいももひきをはいたら、かゆくてしかたがない」「新しいシャツを着たら背中がかぶれた」などの症状は、着たものの摩擦による「非アレルギー性のじんましん」を引き起こしていますが、ももひきやシャツなどを選ぶ場合、素材は綿にするべきか、あるいはナイロンにするべきか、どちらがいいでしょう。
ももひきやシャツは直接肌に当たるので、ナイロンなどの化繊より、天然素材がベターです。ラクダ(純毛)やカシミア(カシミアヤギから取れた毛繊物)のももひきなら、じんましんのようなアレルギーも出にくくなります。
さらに化繊製品は吸湿性などの面で天然素材に劣ります。保温下着などの特殊な処理をしたももひきの場合、処理の過程で皮膚と相性の悪い成分が入っている可能性もあります。
多価カルボン酸とポリアルコールを合体させたポリエステルのももひきは、肌との触感こそいいものの、こすれてかゆくなる、赤くなるという人もいます。
高級品だからといって合うとは限らないので、できれば最初のうちは、新品でも洗濯機に入れて、工場でついた化学物質などを洗い流してからはいてみてください。
パンツやシャツ、あるいはブラジャーのように直接肌に当たるものは、ナチュラルな素材に越したことはありませんが、保温性などはき心地は人それぞれですので、いろいろな製品を試して相性のいいものを選ぶといいでしょう。
下着の場合、締めつけはよくありません。ももひきの足首部分や靴下をカットしてはく人もいるとおり、血行を落とす締めつけは健康によくないので、できるだけ緩めのものを身に着けてください。
患者さんの中に「寒いのでももひきをはいて布団に入るとかゆくて寝られない」という方がいました。
この方の場合、布団の中の温かみで血行がよくなりかゆみを感じたわけです。酒を飲んでお風呂に入ると赤みが増すのと同じ理屈です。また、就寝時はちょうど太腿に手が当たりやすい格好となるため、気になるとかかずにいられなくなり、かけばかくほどかゆみが増す、という悪循環に陥っています。当然のことながら「寝る時はももひきを脱ぎなさい」とアドバイスをしました。
ももひきは1回はいたらやめられなくなりますが、はかなければはかないで何とかなります。小学生が冬に半ズボンで走っていても寒くないように「慣れ」が関係してきます。
本当ははかなくても大丈夫なのに、寒い気がしてはいている、という人も少なくないでしょう。その結果、汗が出て太腿をかいてしまう人もいるようです。
若くしてももひきをはく人は黒をチョイスするようですが、黒いももひきには化繊製品が多く存在します。見た目を気にするのも当然ありですが、素材と相性が悪ければ、見た目よりはき心地で選んだほうがいいのです。あるいは、靴下を長めにして足首を冷やさない、という方法もあります。短いスカートでルーズソックスを履いている女子高生が寒さを感じないのも、足首を覆っているためです。体は手首、足首、首の3カ所から冷えていくため、冬のスポーツで首まわりを温かくするのは理にかなっています。つまり、ももひき代わりに長い靴下やレッグウオーマーを履くという方法も一考です。
そろそろ春となり、ももひきとサヨナラする季節ですが、ももひきと相性の悪い人は、今年の冬ははかずに我慢してみるのも一つの手です。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。