花粉症の話の続きです。いよいよ4月を控えピークの時期を迎えつつあります。すでに花粉症に悩まされている方も多いのではないでしょうか?
花粉の量は、多い年と少ない年がありますが、これは前年夏の日射量と降雨量に関係します。猛暑日が続き雨が少ない夏の翌春には、花粉の飛散する量も多くなります。まさに今年の春も花粉の量がトップクラスの多さのようですから、注意が必要です。
先週は、花粉症対策として、「鼻を濡らす」ことが花粉症予防につながると説明させていただきました。中でもワセリンは効果てきめん。むずがゆくなる目の下や鼻の周辺や鼻孔に塗ると、粘膜に付く花粉をかなりの部分でブロックしてくれます。個人差があるもののかなり有効で、かなりの予防効果が期待できるでしょう。
一方、大多数の患者さんは薬を服用している場合も多いはずです。では、ここで質問です。花粉症の薬を就寝前に飲むなら抗アレルギー薬と漢方薬のどちらがいいでしょう?
一般的に花粉症の抗アレルギー薬には2つの副作用が報告されています。「口が乾く」と「眠気が出る」です。どちらも抗ヒスタミンという成分の特性で、特にトラックやタクシーの運転手さんは仕事中には服用しないほうが賢明です。
現在、医者はさまざまな薬を処方していますが、トップクラスの効き目と言われるのが「ジルテック」です。即効性が強い反面、眠気に襲われるため、就寝前に飲むのが効果的です。
逆に、眠気を抑えるように作られた「アレグラ」などは、その分効き目も弱いという弱点があります。そこで鼻づまりに対して効果のない「アレグラ」に対し昨年、プソイドエフェドリンという成分を加えた新薬「ディレグラ」も出ています。ただ、いずれの薬も眠気を抑えるといっても個人差がありますので、運転中の服用などは控えてください。過信は禁物です。
対して、花粉症などのアレルギー症状緩和のために処方された「小青竜湯」などの漢方薬には麻黄と呼ばれる成分が含まれています。これは副作用として「覚醒」作用があります。つまり就寝前に服用すると眠れなくなってしまいます。漢方薬は「副作用がない」と勘違いされる患者さんも多いですが、市販薬を手に取る場合でも成分表に目を通して確認しておくといいでしょう。
実際、医師の間では、こうした花粉症薬の特性を利用して、出勤前に抗ヒスタミンと漢方薬を一緒に飲むドクターも少なくありません。これは「眠気」と「覚醒」が相殺し合って、副作用を最小限にする効果が期待できるからです。
また毎年、花粉症の薬を飲み始めるタイミングについて聞かれることが多々あります。特にピーク時期が近づくと「今から飲んでも間に合いますか?」と尋ねられます。
実は花粉症の薬には2つのタイプがあります。1つは花粉の飛散が本格的になる2週間ぐらい前から飲む薬で、初期症状が出る前に服用すると発症が抑えられます。「インタール」や「シングレア」が代表的です。花粉症が始まってから服用する即効性の薬には「ストナリニ」などが知られています。
ただどちらも花粉症の薬は、高血圧薬のように、年間を通して常用する必要はありません。なぜなら花粉症の多くは「バレンタインデーからゴールデンウイーク」と期間も限られており、この間、雨の日を除くと、服用期間は2カ月間前後です。起床後、くしゃみが3、4回出た日なら服用、出ない日は薬をポケットに入れて出かけるようにしてください。
備えあれば憂いなし。花粉症対策でも有効なのは言うまでもありません。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。