これを意外な結果と思うか、なるほどとうなずくか。6人のノーベル賞受賞者を生んだ名古屋大学を擁し、浅田真央ら世界的アスリートも輩出。広い道路や味噌カツなど、独自の文化でも知られる名古屋が「嫌われ大都市NO1」に選ばれている。いったいなぜなのか。
「市が税金を使って調べた結果、名古屋はおもしろぅないとか、行くところがにゃあとかいろいろ言われて。行きたくない街のダントツだでね。その結果を受けて、名古屋人の8割が『しょうがにゃあ』と言う。そのあたりがまた、名古屋人のスゴいところだな」
そう言って苦笑いするのは、河村たかし名古屋市長(68)だ。これは昨年、名古屋市が行った、日本8大都市を対象にした「都市ブランドイメージ調査」。ところが蓋を開けてみると、当の名古屋市が「最も魅力に欠ける都市」「買い物に行きたくない部門」で堂々の1位に輝き、その不人気ぶりを内外に示す結果となってしまったのである。
そんな名古屋人の気質と特性、源流を解き明かした「名古屋はヤバイ」(ワニブックス)が発売され、話題になっている。著者の「ナンバーワン戦略研究所」矢野新一所長は「県民性博士」として知られるマーケティングコンサルタントだ。
「仕事で何度も出かけていますが、名古屋に近づくにつれ、新幹線から見える街並みが茶褐色になるでしょ、あれがすごく不思議でね。『日本一の嫌われ都市』の汚名を着せられたのはどんな街なんだろうと興味が湧き、その根底が知りたくて名古屋取材を始めました」
かつて、タモリ(71)がテレビ番組で「名古屋人はエビフライをエビフリャーって言う。とにかく、みゃーみゃーうるさいし、ケチで田舎臭い」と嘲笑したのは80年代。だが時代を経てもなお、そのイメージは定着したままだ。矢野氏が言う。
「実際、名古屋人はとにかくお金を出すことが嫌いで、貯蓄を愛するシビアな堅実派です。そのため食べ物も、安くて量が多いことが重要なので、味は二の次三の次。日本最大の工業都市でありながら企業を信用していないから、株の保有率が低い。工場の火災保険料がもったいないからみんなで手分けして巡回し、浮いたお金を新しい工場建築費用に回す、なんていう話もあります」
シビアな堅実派でありながら、見栄っ張りでもあり、
「さすがに最近はガラス張りのトラックの荷台に嫁入り道具を積んで‥‥ということはなくなったようですが、結婚披露宴では相変わらずお菓子をまいたり、高級ブランド品をそろえたり。名古屋の女性はブランドもので着飾り、美容院やエステに通って自分を磨きますが、目立ちさえすればいいという考えが強いのでトータルバランスが悪く、どうしてもダサくてケバくなる。加えて名古屋は、よそ者を排除してきたため、他の地域のおしゃれに染まらなかった。それが独特のファッションセンスを形成したと考えられます」(矢野氏)
披露宴会場で派手に菓子をまく一方、食べきれなかったものはタッパーに入れて持ち帰る。これもまた、象徴的な「見栄っ張り」と「ケチ」の共存である。