坂東市でリンさんの筆箱を発見し、警察に通報した80代の男性はこう語る。
「コイを獲る網を仕掛けに行こうとして河川敷に下りたら、コンクリートの斜面のところにポツンとピンク色の筆箱が落ちていた。近くでランドセルや衣服も見つかっていたから、『もしかして』と思ってなあ」
河川敷で見つかった遺留品のランドセルや衣服、筆箱は、それぞれが数百メートル間隔で無造作に捨て置かれていた。遺体と同様に、その粗雑な扱いには怒りを禁じえないが、ここでは犯人は土地勘のなさを露呈したと、小川氏は言う。
「遺体発見現場は確かに誰も通らないような道ではあるけど、もう100メートルほど先に行けば、もっと発見されづらい場所もありました。それに遺体を毛布などでくるもうともせずにただ放置したりと、連れ去り時にうかがえた用意周到さに比べて、非常に“雑”なのです。両現場とも、車で近くを通ったことくらいはあっても、周辺の状況を熟知していたとは思えません」
気になるのは犯行動機だが、
「遺体が何も着ていない状態で発見されたことからも、犯人は性的倒錯者であると推察されます。この手の犯罪者は、対象者と『仲よくなりたい』『独占したい』という欲望が強く、単独犯であるケースが多い」(前出・小川氏)
一方で「複数犯」を主張する声も上がっている。
「今年2月には男児らをキャンプに誘い、わいせつな写真を撮影した男6名が逮捕された。今回の事件で組織的犯行をうかがわせるのが、遺留品の遺棄方法。その状況からリンさんの衣類や所持品を車の左右両側に投げ捨てたと見られている。つまり、運転者の他に同乗者がいた可能性も出てきた」(別の捜査関係者)
依然として解決の糸口が見えない千葉の殺人・死体遺棄事件に一筋の光明が差したのは、3月29日のことだった。
「千葉県庁の記者クラブに、犯人を告発する文書が届けられたのです」(社会部記者)
本来は記者クラブの外部に漏れることのない「告発文書」を入手。そこには、
〈この情報を事件解決並びに現場周辺地域の防犯に役立てて頂きたいと考えております〉
との思いがつづられ、犯人とするA氏(文書では実名)が過去に児童保育施設でボランティアをしていたこと、さらに〈幼児への性的暴行未遂〉(文書より)の過去を暴露していた。詳細を聞くべく、記載された「差出人」の連絡先に電話をかけたが、締め切りまでに相手が出ることはなかった。
司法解剖を終えたリンさんの遺体が、無言の帰宅を遂げたのは3月28日のことだった。あらためて自宅を訪ねると、雨戸は閉めきられ、外部との関わりを一切断っているように見えた。かつては一家の笑い声が漏れることもあっただろう。
「補助輪付きの自転車に弟を乗せて歩いているリンちゃんを見かけて挨拶すると『こんにちは!』と明るく返してくれて‥‥本当に許せません」(近隣住民)
前出・小川氏が言う。
「松戸市を含め、事件現場は3カ所。移動するのに、監視カメラやNシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)のないところだけを走行する、なんてことはありえない。警察は犯人を遠からず特定するでしょう」
遺族は近く祖国のベトナムに帰国する予定だという。一刻も早い「犯人逮捕」の一報が待たれる。