千葉県我孫子市で9歳の女児が遺体となって発見された事件で、4月14日に46歳の男が逮捕された。当初は「通り魔的犯行」との見方もあったが、容疑者の男は意外にも、被害者が通う学校で保護者会の会長を務める“善意の人”だった。
「よく知っています。今年度も継続して会長を務めていただく予定だったんです。子供のことをよく考えている人という印象だったのですが‥‥。ショックが大きすぎるので、これ以上は勘弁してほしい」
逮捕当日、事件の被害者でベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさんと同じ小学校に子供を通わせる母親は、そう言ったきり、口を閉ざしてしまった。犯人とされる男がごく身近にいたことに、動揺を隠せない様子だった。
死体遺棄容疑で逮捕されたのは松戸市に住む自称・不動産賃貸業の澁谷恭正容疑者。彼が所有し、子供2人と暮らしていたマンションは、リンさん宅から約300メートルの位置にあった。
「顔を合わせるといつも朗らかに挨拶してくれて『今日もいい天気ですね』とか声をかけてくれるんです。朝夕の登下校時には、よく子供たちを送り迎えしていました」(同じマンションの住民)
マンションでは子煩悩なパパとして知られ、地域では防犯活動に尽力していた。
「いつも通学路に立って見守り活動をしていました。朝の通学時間は、交通量が多くなるんです。澁谷さんが見守り活動をしていた1年ほどは、事故もなく、本当に感謝していたのですが‥‥」(地域住民)
保護者会の会長だけでなく、募金活動などのボランティアにも積極的に関わっていたという澁谷容疑者。だが、現地で取材を進めると、“異様言動”が浮かび上がってきた。
「ニュースの映像を見て、アッと思いました。あの紺色のパーカーをよく着ていましたから。一見、性格は明るそうですが、ごくたまに、険しい目つきをして、異様な空気を発散することもありました。逮捕されたと聞いて、妙に納得できる部分もあります」(別の地域住民)
逮捕の決め手について、遺棄現場に残された遺留物と澁谷容疑者の「DNA型の一致」が報じられたが、水面下ではさらなる重要証言が寄せられていたという。
「遺体発見現場近くの路上で、不審なキャンピングカーが目撃されていた。そこで澁谷と思しき男が車を停めて、車内でモゾモゾと怪しい動きをしていたという話だった。そのキャンピングカーを含め、澁谷が所有していた2台の車をすでに押収している。物的証拠が出るのは時間の問題だろう」(捜査関係者)
澁谷容疑者がキャンピングカーを停めていた駐車場近くの住民はこう話す。
「あたりは真っ暗だから車内の灯りがついているとすごく目立つ。ちょっと前のことだけど、2~3時間ほど誰かが中にいるのを目撃したことがある」
今回の取材で、容疑者を知る人間は概して「信じられない」「まさか」と困惑の表情を浮かべるばかりだった。元刑事で犯罪学者の北芝健氏は言う。
「小児を対象としたペドフィリアと呼ばれる性的嗜好の持ち主は、おしなべて知能が高く、社会的信用を得る能力にたけています。海外の犯罪事例を見ると、教師や職員として教育機関に紛れ込んでいたケースは珍しくありません。今回の事件は、そうした“守る立場”の人間をも偏見なく捜査しなければいけないという教訓になったのではないでしょうか」
逮捕直後は、警察の取り調べに対して黙秘を続けていた澁谷容疑者。事件の全容解明が待たれるが、
「今後の裁判の展開しだいではありますが、これまで報道された事実関係に基づくと、殺人と死体遺棄の罪で懲役15年前後の実刑判決が考えられるところです」(レイ法律事務所・河西邦剛弁護士)
未来ある幼い命を奪った犯人には厳罰が待っている。