スポーツ

プロ野球「師弟の絆」裏物語 第2回 松坂大輔と東尾修の「一子相伝」(2)松坂が“原点回帰”した

 だが、松坂のピッチングは、リハビリを経てからは大きく変わっていた。その投球ぶりを見た時、プロ入り直後の松坂の投球との類似点を見つけることができた。当時監督だった東尾は松坂について、こう分析していた。

「アイツは結構、頑固なんだよ。自分で納得するまではなかなか自分のスタイルを変えない。プレーも三塁側ばかりを踏んでいるけれど、幅をつけるため、一塁側から投げれば、体のキレも必要になってくるし、速いボールを投げよう投げようとするから、力んでタメができない。8割の力で投げろ。スピードガンを見るなと何度も言ったことがある」

 あれから14年たった復活戦で、松坂が自然に行っていたことこそ、〈一塁側のプレートを踏み、8割の力で投げる投球〉だったのだ。

 全101球の投球中、71球というストライクの多さも、東尾が伝えていたことを忠実に守った結果といっていい。

「どっか頭の片隅に残っていたとすれば、うれしいね」

 と東尾も満足気だったが、それほど松坂というピッチャーは、東尾が手塩にかけて育ててきた存在だったのだ。

 ここで思い出されるのは、松坂の入団直前のシーズンのことだ。98年の日本シリーズ、東尾率いる西武は、権藤博(現中日投手コーチ)率いる横浜(現DeNA)と対決した。結果は横浜が4勝2敗で日本一に輝く。

 その年のドラフトでは、西武が横浜より先にくじを引くことになった。そして“西武・松坂”が誕生した。

「あの時うちが負けていたならば、間違いなく松坂の当たりくじを引けた。シリーズで負けて2位になり、松坂を取って日本一になれば、横浜は間違いなく盛り上がったはず」

 と権藤は冗談めかして言う。松坂の希望球団も横浜だったのだから、なおさらである。

 だが、松坂は西武に入団した。当時、オーナーだった堤義明の号令一下、「金の卵」であった松坂への配慮は並大抵ではなかった。

 失業中だった松坂の父親を系列の運送会社に入れることに始まり、将来松坂の弟を系列会社に入社させる確約をし、松坂が入る寮の寮長は、松坂の横浜高時代の監督、部長と懇意だった所沢商の監督を配置している。まさに、至れり尽くせりのVIP待遇である。

 東尾は、若かりし日の松坂にこう伝えた。

「最初は右も左もわからず、いきなりプロ入りしたのだから、こっちで手を差し伸べなければいけない。だが、その先は自分の才覚で作り上げていかないといけないからな」

 それほど、東尾も松坂の将来性に期待していたのだ。

カテゴリー: スポーツ   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
4
段ボール箱に「Ohtani」…メジャーリーグMVP発表前に「疑惑の写真」流出の「ダメだ、こりゃ!」
5
巨人が手ぐすね引いて待つ阪神FA大山悠輔が「ファン感謝デー」に登場する「強心臓」