「振り向けばDeNA」が現実になりつつある阪神タイガース。球団はすでに来季スタッフの組閣について、大胆改革に踏み切る構えだ。そこで急浮上しているのが、禁断の「掛布雅之」というカード。因縁浅からぬフロントとの恩讐を越えて、ファン待望の「ミスタータイガース」は電撃復活となるのか─。
酒癖の悪さで“出入り禁止”に…
「ダメ虎を何とかしてくれ〜」
というタイガースファンの心の叫びが聞こえたのだろうか。8月28日付の「デイリースポーツ」の1面に、ミスタータイガースの掛布雅之氏(57)が突如登場したのだ。しかも、見出しには、「掛布入閣ファン熱望」の文字が躍る‥‥。
紙面の中身も、すでに事実上、今シーズン終戦となった阪神ファンの溜飲を下げる内容だ。新聞の読者に、「来季のタイガースを変えてくれそうなOBは?」なる緊急アンケートを実施。その結果、掛布氏が2位の矢野燿大氏(43)を大きく引き離す54%というブッチギリの支持を受けている。
デイリーの記事には“伏線”があった。
「8月26日の広島球場での阪神─広島戦の試合前イベントに掛布氏が久々に登場し、ファンからも熱いエールを受けていました。和田豊監督とも握手を交わし、いまさらながら阪神OBだったことをアピールするには十分でした」(在阪プロ野球担当記者)
阪神は和田監督の来季続投が決定しているだけに、ファンからすれば、再建の切り札に「掛布入閣」の期待が高まるのも当然だろう。
だが、阪神のオールドファンなら、掛布氏と球団の確執はすでに知るところだろう。
88年に33歳の若さで現役を引退。しかも、その年の開幕直前、「酒気帯び運転」で逮捕されたことで、当時の久万俊二郎オーナー(故人)が、マスコミを通して掛布氏を辛辣に批判している。08年には事業失敗による多額な借金も発覚。さらに昨年7月には2度目の不渡りも出し、その負債総額は4億円前後とも報じられた。映画出資や外車販売のトラブルも重なり、阪神のユニホームを再び着ることは絶望視されていたのである。
「昨今はプロ野球解説の仕事もめっきりと減ってしまい、東京と大阪の小さなホールでトークショーをこなしている程度です」(前出・在阪記者)
それでも、これまで他球団を含め、指導者としての経験が一度もない掛布氏がここまで期待されているのには訳がある。
さるプロ野球中継担当スタッフによれば、
「掛布さんはわかりやすい解説に定評があり、視聴者の人気も高い。それのみならず、玄人目線で試合展開を読み、打者心理や打撃技術を的確に言い当てるところは、球団のフロントやOBたちも一目置いているほどです。いわば、巨人に“江川待望論”が出るように、阪神で“掛布待望論”が出るのは、野球理論が秀でているからでしょう」
しかもチームの惨状を見れば、わらをもすがる思いで、禁断の〈掛布〉というカードに手を伸ばさざるをえない事情もある。
プロ野球関係者が言う。
「古参の球団職員の中には、掛布の酒癖の悪さを指摘する声も聞かれます。和田阪神に入閣したいのなら、『酒は一滴も飲みません』という念書を書かせろ、といった意見すら出ています。ただ、これまでの掛布と球団の因縁を考えれば、ずいぶんと球団も譲歩しているという印象。かつては“出入り禁止”だった掛布も和田さんとのツーショットがOKになるほどで、“電撃和解”したと言ってもいい」
ここにきて、ようやく、掛布氏入閣の門戸は開かれたのである。