倉本聰氏(82)がみずから企画し、9年ぶりに脚本を手がけた連続ドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)。主演の石坂浩二(75)が、倉本氏の“お怒り”を代弁することで、この春最大の「問題作」となっている。
「今のテレビ界、このままでいいとは私どもも夢にも思っておりません」
4月10日放送の第6話ではこんなセリフが飛び出した。真っ向から批判したのは常盤貴子(44)で、老人ホームの職員という役どころ。
「ドラマの舞台となる介護施設は、俳優やデイレクターといった元業界人だけが入れるという設定ですが、テレビ局員は『入所NG』。理由は今のテレビをつまらなくした張本人だから。局へのあてこすりとしか思えません」(テレ朝関係者)
倉本氏といえばシリーズ化された「北の国から」(フジテレビ系)をはじめ、数々の人気ドラマの脚本を執筆。00年には紫綬褒章を受章している。
「かねてから倉本さんは、視聴率ありきのドラマ作りに憤りを抱いていて、『何十年もドラマを観続けてきたシルバー世代のための作品がない』と嘆いていました。時代劇が激減し、実力のない若手俳優ばかりが重用されるテレビ界への怒りを作品でブチまけているというのが、もっぱらの見方です」(前出・テレ朝関係者)
本作で脚本家に扮して倉本氏の“代弁者”を務めるのが石坂だ。今後、そのセリフはさらに過激さを増すという。
「石坂さんが、『今のテレビは本当にくだらない』『観る価値がない』『局の連中は何もわかっていない』などと業界をボロクソに痛烈批判するんです。台本を読んだ出演者の一人は、『こんなこと言って大丈夫ですか?』と本気で心配していました」(ドラマ関係者)
この「暴走台本」に立ち向かう石坂にも、テレビ局との間に因縁ドラマがあった。02年には「4代目・黄門様」を演じた「水戸黄門」(TBS系)を途中降板している。
「表向きの理由は、直腸ガンの治療ということでしたが、復帰後に石坂が『面倒くさい仕事がなくなったから、気分爽快』などと発言して、周囲をヒヤヒヤさせました」(芸能レポーター)
昨年3月末には20年以上司会を務めた「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京系)を降板したが、
「番組プロデューサーとの確執が原因で、石坂の発言が編集でカットされ続けていたという“イジメ問題”が取りざたされました」(前出・芸能レポーター)
こうした過去があるだけに、石坂の「イメージ悪化」を懸念する声も少なくない。
「ドラマで連発する過激発言が、石坂本人の意趣返しとも捉えられかねません。テレビ界に“ダメ出し”をした石坂にオファーを出していいものか、二の足を踏むケースが出てくるでしょうね」(前出・テレ朝関係者)
石坂の“大ピンチ”を招いた今作の収録現場には、倉本氏が熱心に通い詰めているという。
「倉本さんは台本どおりにセリフを言わないと烈火のごとく怒るんです。見ている前でセリフを勝手に変えるなんて考えられません」(前出・ドラマ関係者)
その“ニラミ効果”は、一方で浅丘ルリ子(76)や加賀まりこ(73)、八千草薫(86)といったベテラン女優陣に好影響をもたらしていた。
「主要キャストの平均年齢は80歳近いのに、皆さん完璧にセリフを覚えています。言葉がつかえたりしたのも見たことがありません」(前出・ドラマ関係者)
まさにシニアパワー全開で、テレビ界に一石を投じているのだ。ドラマ解説者の木村隆志氏が言う。
「批判の矛先はテレビ業界に限りません。石坂さん演じる脚本家が、息子さんからタバコと健康の話を振られて、『いちばん体に悪いのは、“禁煙”とそこらじゅうに書かれた文字だ!』と、逆ギレするシーンが印象的でした。近年はコンプライアンス偏重で、めっきり少なくなった喫煙シーンがバンバン出てくるのも、倉本さんの愛煙家としての強いこだわりではないでしょうか」
言いたいことがバンバン言える──それもまた「やすらぎ」なのだろう。