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池井戸潤が最新作「アキラとあきら」を語り尽くした!(1)物語は著者の半生にちなんだキーワードが関わる

 ドラマ「半沢直樹」や「下町ロケット」などの原作で知られる人気作家の池井戸潤氏。ファン待望の最新作は、銀行を舞台にした渾身作だ。すでに7月放送のドラマ化が決定したばかりか、池井戸氏としては珍しい青春小説を彷彿(ほうふつ)させるストーリーが注目を集めている。その傑作の舞台裏を著者が語り尽くした。

 父の経営する町工場の倒産を見て育った息子、山崎瑛(あきら)。名門海運企業・東海郵船の創業家に生まれ、英才教育を受けて育った御曹司、階堂彬(あきら)。対照的な星の下に生まれた二人は、奇しくも同じ名前だった──。

 宿命と対峙する二人の青年が主人公の『アキラとあきら』(徳間書店刊)は、作者である池井戸潤氏にとっても、ある種、宿命の物語と言えるのかもしれない。物語には、池井戸氏の半生にちなんだ2つのキーワードが関わっているからだ。

 ひとつは「銀行員」。これまで、ドラマでも大人気を博した「半沢直樹シリーズ」や「花咲舞シリーズ」など、デビューから数多くの銀行ものを書き続けてきた池井戸氏は、自身も都市銀行勤務の経験者。『アキラ~』は、銀行員という存在を掘り下げ、生い立ちにまで遡った物語である。

「最初から銀行員を目指しているという子供はあんまりいない気がしますが、主人公の子供時代から銀行員になるまでを描くことで、ディープなものになることを目指しました。正反対の境遇の二人にしたのは、『王子と乞食』的な対比で書いてみたら面白いんじゃないだろうかという発想からです。倒産した町工場というのはこれまで何度か書きましたが、経営者の一族のことを書くのは初めてかな。僕の小説では、金持ちはあんまり主人公にならないようです(笑)」

 金に翻弄される青少年期を送った二人は、それぞれの理由と夢を抱いて銀行に就職。そこで同期として友情を育み、ある時はライバルとして競い合う。新人研修に始まり、取引先との融資交渉など、ビジネスシーンをリアルに描く手腕は、さすがに経験者の筆。

「二人が競う研修のディベートは、完全なフィクションです。現実の銀行の研修では、ああいうことは行われていないと思いますが、いくらリアルだからといって、研修で札を数えてばかりいても、小説としてはしょうがないですから(笑)。白熱していて、僕も好きな場面です。あと、瑛が、実家と同じように潰れそうな工場経営者を救う場面で、彼の過去にまつわる人物が絡むところも‥‥。彬の一族の事情は、この規模の会社ならきっとこういう感じだろうなと、想像しながら書きました。彼の父である社長の一磨(かずま)は、作中ではいちばん優れた経営者。ちょっと頑固で強引なところもあるけれど、賢くて思慮深く、常に正しい判断を下すことができる人物です」

取材・文/大谷道子

池井戸潤:1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。「果つる底なき」で江戸川乱歩賞を受賞、作家デビュー。「下町ロケット」で直木賞を受賞。著書に半沢直樹シリーズ『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』、花咲舞シリーズ『不祥事』、『ルーズヴェルト・ゲーム』『民王』『七つの会議』『陸王』など多数。

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