今年6月、埼玉で高齢者の兄弟姉妹と見られる3人の遺体が自宅で見つかった。老老介護の果ての不幸なできごとと見られている。しかし世の中には「センテナリアン」(100歳を超え)ながら元気な高齢者も多い。そしてその元気の秘訣は“和食”にあるという。
埼玉での不幸な出来事は他人事ではない。団塊の世代(1947年から1949年に生まれた方)が、後期高齢者(75歳以上)に到達する2025年には、総人口比で75歳以上が約2割(約2200万人)となる超高齢化社会が訪れる。ところが、健康寿命(平均寿命のうち、健康で活動的に暮らせる期間)は男性で71.19歳、女性で74.21歳(内閣府・高齢社会白書・平成27年)だ。平均寿命との差の約10年あり、すなわちそれは“介護”を受ける時間になるのだが、現実には少子化で介護する若者がおらず、老老介護が余儀なくされる。生涯健康であることは理想で夢だ。
しかし世の中には元気な高齢者も多い。美術家の篠田桃紅さんは104歳、日本が誇る世界最高齢スイマー長岡三重子さんは103歳だ。他にも100歳を超えて現役で活躍している人は多い。このような「センテナリアン」(100歳以上の人)でも元気な人は憧れの目標だ。どうすればそうなれるのか。薬学博士の谷芳郎氏が言う。
「慶応大学医学部・百寿総合研究センターの10年にわたる1500人の高齢者を対象にした調査研究で“さまざまな老化に関係する因子の中で、慢性炎症が特に健康寿命の阻害要因として重要でした。慢性炎症を抑えることが、健康長寿の達成には重要”と発表している」
ここで言う炎症とは、加齢とともに体の中で徐々に進む慢性炎症のことで、心臓疾患や認知症などの病気に影響を及ぼすという。センテナリアンに共通するのは、体の中で起きている炎症のレベルの低さだという。活躍しているセンテナリアンの炎症レベルは一般の基準値の10分の1と極めて低いのだ。
では、どうすれば慢性炎症を抑えることができるのか。
「運動や精神状態など、様々な要因が慢性炎症にかかわっていることが明らかになっていますが、多くのヨーロッパの研究者たちが、大きな要因として考えているのが食事です」(前出・谷氏)
フードコンサルタントの中川陽子管理栄養士が説明する。
「ヨーロッパの研究では地中海食を厳密に守れば、心臓疾患、ガン、認知症など、慢性炎症が関わる病気のリスクが低下すると言われています。しかし日本にも世界で最もすばらしい食“和食”がある。和食は慢性炎症のレベルを低く保てる。和食の習慣を大切にしてもらいたいですね」
“和食”とは言わずもがなのご飯に味噌汁、それに納豆、ぬか漬けなどの発酵食品だ。それに魚、豚肉、卵、海苔などを適宜付け加えれば申し分ないだろう。
(谷川渓)