夏の甲子園史上、唯一3連覇を果たしている中京商(現・中京大中京=愛知)。31年第17回大会から33年第19回大会にかけて達成された不滅の大記録である。
この中京商よりも早く3連覇の偉業を達成できたのではと思われるチームがあった。それが29年第15回大会と30年第16回大会を連覇した広島商である。
しかし大会史上初となる3連覇がかかっていた31年第17回大会には出場すらできなかった。というのも、広島商はこの年の春の選抜第8回大会で優勝していた。当時は選抜で優勝すると副賞としてアメリカ遠征というご褒美が与えられていた。その旅行日程と夏の大会の予選が重なったため、広島商は春優勝時の主力メンバーがアメリカ遠征を優先。そのため、控えメンバーで戦うことになったのだが、補欠選手だけのチームで予選を突破できるほど勝負は甘くなかった。当然というべきか、予選の山陽大会で敗退。
こうして広島商は夏の甲子園3連覇のチャンスをフイにしてしまったのだ。さらに、この間に春の選抜も制しているため、史上初にしていまだにどのチームも達成できていない夏・春・夏の3連覇、その両方のチャンスをフイにしてしまったことにもなるのだ。
王者・広島商不在の夏の甲子園で優勝を飾ったのがこの大会で初出場を果たした中京商だった。ここから中京商不滅の3連覇が始まることとなるのである。
実はこの年の選抜で両者は顔を合わせており、広島商が選抜初出場で優勝を狙っていた中京商を2‐0で降している。もしこの時、広島商がベストメンバーで夏の大会に出場していれば、歴史は変わっていたのかもしれない。
(高校野球評論家・上杉純也)