3月19日から始まる第89回選抜高校野球大会。初日の第1試合に登場する至学館は、夏の選手権には過去1回の出場があるが、春の選抜は今回が初出場だ。しかし、初出場とはいえその実力は侮れない。それは春の選抜での通算優勝回数1位を誇る愛知県のチームだからだ。
ちょっとした高校野球通なら、優勝回数1位の都道府県といえば大阪府を思い出すのではないだろうか。浪商、PL学園、そして大阪桐蔭と時代時代に強豪を輩出してきた、まさに“野球強豪の地”。夏の選手権は通算12回と全国1位を誇っているのだが、春の選抜は優勝9回と惜しくも2位なのだ。その大阪府を抑えて優勝10回。僅差で1位に輝いているのが愛知県なのである。
特に優勝回数に大きく貢献しているのが、中京大中京と東邦の2校。ともに戦前から甲子園で活躍し、史上最多4回の優勝回数1位を分け合っている。県内だけでなく“春の選抜”においても宿命のライバルなのだ。この2佼に加えて愛知商と愛工大名電が各1回ずつ。計10回で、47都道府県のうち、愛知県だけが唯一の二ケタ優勝回数に乗せているのである。
さらに愛知県は春の選抜での準優勝回数でも東京都と大阪府の9回に続く8回(内訳は中京大中京4回、東邦2回、愛工大名電1回、一宮中=現・一宮1回)。夏の選手権では中京大中京が史上最多7回の優勝を誇り、ただ1校だけが目立って見えるが(他は愛知一中=現・旭丘が優勝1回、東邦が準優勝1回のみ)、春の選抜に関しては“中京大中京以外のチーム”が活躍してもおかしくないのである。
今回、愛知県から出場する至学館は昨秋の東海大会決勝で強豪・静岡の前に1対5で敗れ、準優勝に終わったものの、県大会から東海大会を通して通算5回もサヨナラ勝ちを収めた粘り強いチーム。女子レスリングでは伊調馨や登坂絵莉などの金メダリストを輩出した全国屈指の強豪だが、その女子レスリング部に負けない快進撃を見せたいところだ。
(高校野球評論家・上杉純也)