数ある“まさか”の中でも、好事家の胸をときめかせるほどの意外作とは? 美女たちの艶シーン研究の第一人者である松井修氏が、特にしびれたシーンを振り返る。
まず真っ先に頭に浮かんだのは、夏目雅子です。松本清張原作、和田勉演出の「ザ・商社」(80年、NHK)での、見逃してしまいそうなほど一瞬の、ワンシーン。夏目が相手役の山崎努の前で突然、体に巻いていたバスローブをハラリと落とすと、純白の柔乳が僕の眼前に現れたのです。そこでドラマは、終了‥‥。
え!? ちょっと待って! 画面は暗いし、今、あそこで一瞬見えたものはいったい何だったんだ!?
よし巻き戻し‥‥なんて当時のブラウン管テレビではできるわけがない。興奮と混乱を極めた状況に、いったいどれだけの視聴者が陥ったことでしょう。当時すでに人気だったあの夏目雅子が、突然脱ぐなんて、と。ストーリーは完全にぶっ飛びましたね。人気絶頂時の夏目のこのシーンは、当時、かなり話題になりましたね。
前情報なく観て驚いたのが、村上龍原作・監督の「だいじょうぶマイ・フレンド」(83年、東宝)です。
オープニングでいきなり、広田レオナ(54)がヌードでどっかり横たわっていました、画面いっぱい、ヌードです。映画館の大画面で観た人は、さらにショッキングだったんじゃないでしょうか。まるで海外のピンナップのような日本人離れした広田のヴィーナスボディは、迫力満点でした。
広田といえば再ブレイクが話題になっていますが、同様に石田ゆり子(47)も、アラフィフ再ブレイク女優の一人と言えます。僕は彼女の大ファンなんですが、「不機嫌な果実」(97年、TBS系)はすごかった。
本人が避けていたのか、これまでの出演作にラブシーンらしいラブシーンって少ないんですよね。でも、事務所としては女性らしさで売りたかったのか、満を持してのこのドラマの石田の役どころは、結婚生活に不満を持ち、不倫へ走る30歳人妻。
各話のタイトルが「人妻のいけない唇」や「背徳のおしおき」「恥ずかしい肉」など、性を想起させるものになっていて、毎回、際どいシーンの連続。美しい背中のセミヌードや濃厚な濡れ場など、石田がこんなことをするなんて、これが最初で最後でしょうね。
今でこそ小悪魔イメージが定着しましたが、当時はド清純派真ッただ中だった斉藤由貴(51)も、「同窓会」(93年、日本テレビ系)で“まさか”を連発してしまいました。
例えば、毛じらみに感染したことで、片脚を上げて股間をかくシーンや、夜の公園で行きずりの男と対面立位でファックするシーンなど、かなり際どかったですね。
当時は清純派で、キスはおろか性行為を思わせる仕事は一切していないはずです。それがまさか、こんなことをするなんて、と。
映画史上、最も“まさか”な演出をするのが大林宣彦監督です。「転校生」(82年、松竹)では、小林聡美(52)を“この役者は女の子ですよ”と確認させるかのような脱がせ方を。
「野ゆき山ゆき海べゆき」(86年、ATG)では鷲尾いさ子(50)が、入浴シーンなのになぜか上半身はつからず、おっぱいが湯からまる出しに。
「なごり雪」(02年、大映)では宝生舞(40)が突然、着替えています。とにかく強引なんです。
通常の作品では、濡れ場やヌードが始まりそうな予兆があるじゃないですか。徐々に脱いでいく、などの。大林作品にはそれがないんです。
「脱ぐようなシーンじゃないのに、今!?」と驚くのが定番となっています。
最後に、意外すぎて見たくなかったのが、室井滋(56)の本格ロマンポルノ作品「女囚 檻」(83年、日活)。美人女優と一緒に、個性派女優の室井もバリバリにアエぎまくり。「おまえは脱がんでいい!」と突っ込みたくなりましたね(笑)。