プロ野球の「先発・中継ぎ・抑え」の分業制ではないが、女優の世界も「脱ぐ・脱がない」の線引きは明確。ところが、そうしたこととは無縁の清純派が突然、大胆なサプライズを届けてくれた。
「70年代の日本映画界は、撮影に入ったら撮影所のルールに従うというのが鉄則。今みたいに、CM契約を気にして、所属事務所が内容に口を出すということは皆無でした」(秋本氏)
それを証明したのが、竹下景子(63)が出演した「祭りの準備」(75年、ATG)だ。当時の竹下は「クイズダービー」(TBS系)で“3択の女王”と呼ばれ、また「お嫁さんにしたい女優No.1」として絶大な支持を集めた。
好感度やCM需要を考えれば「脱ぐ必要」などどこにもなかったが、低予算で知られるATG作品で、豊満なバストを何度も揺らす。そして、江藤潤の背中に指をなぞらせ、悩ましいアエギ声を響かせるのだ。まさしく「竹下さんに3000点!」の熱演だった。
同じく美人女優の五十嵐淳子(64)も、早い段階でヌードになった一人。渡辺淳一原作の「阿寒に果つ」(75年、東宝)で、美白の乳房を何度も見せつけた。若い恋人(三浦友和)、レズの手ほどきをする女(二宮さよ子)、年上の男(地井武男)と、相手を代えながら濃厚シーンを重ねていく。
実は、五十嵐が渡辺淳一氏に手紙を書いて出演を直訴したというから、今どきの「脱がない若手女優たち」にも見習ってもらいたい。
子役時代からの成長を日本中が見守ったのは安達祐実(35)だが、本格的な脱皮となったのが「花宵道中」(14年、東京テアトル)である。安達は、江戸・吉原の遊女に扮し、客に抱かれるシーンで何度となく全裸を披露。
「‥‥見ないでくださいまし!」
ほれた男の目の前で、お大尽に着物の裾をまくり上げられ“孔雀スタイル”で貫かれる。さらに、柔軟で形のいい乳房をわしづかみにされる‥‥。
顔のあどけなさは当時のままに、大人の艶技をこなせるようになったギャップに驚かされてしまった。
近年、演技力の評価が急上昇しているのが池脇千鶴(35)だ。その分岐点となったのが、初のベッドシーンを見せた「ジョゼと虎と魚たち」(03年、アスミック・エース)での熱演に違いない。前出・秋本氏が言う。
「ヌードがありそうで結局はなかったという女優が多いご時世で、前ぶれもなく脱いだ代表例が池脇でした。今と違って体はまだ貧相だったけど、脱がないはずの清純派が脱いだ衝撃は大きかったですね」
秋本氏は、同様の衝撃に京野ことみ(38)が幻想的なフルヌードを見せた「TAKESHI’S」(05年、松竹)や、この夏に公開された満島ひかり(31)の「海辺の生と死」(スローラーナー)もあげた。事前の情報が少ない時こそ、実は濡れ場の隠れスポットなのかもしれない。
「鈴木保奈美(51)が寝そべってのオールヌードを見せた『いちげんさん』(00年、メディアボックス)も驚きました。90年代のトレンディドラマの女王たる保奈美は、言ってみればヌードと最も縁遠い女優。よほど原作にほれ込んだということでしょうか」(前出・秋本氏)
連ドラの出演が多い木村佳乃(41)も、濡れ場とは距離のある存在。それでありながら「さくらん」(07年、アスミック・エース)では、売れっ子の花魁に扮し、着物のままバックから犯される役を堂々と演じた。全裸こそ見せなかったものの、アクメ顔の本気度は「木村佳乃にあらず」の不思議な高評価だった。
最後に、カリスマセレブである君島十和子(51)が「女優・吉川十和子」だった時代、「極道の妻たち 三代目姐」(89年、東映)で清純派の殻を突き破った。
姉の男である萩原健一に無理やり犯され、スレンダーな全裸を何度も見せるのが十和子の役どころ。これが映画初出演だったが、ハラを据えた脱ぎっぷりは、どこか今の姿につながっているようである。