「どうだ。本は読んだか?結構、イケるか?」
このたび、書き下ろし純愛小説「アナログ」を出版した殿は、発売日から2日後、わたくしに会うと、実にうれしそうに、冒頭の言葉を放り込んできたのです。もちろん、発売日の朝一で購入し、その日のうちに完読したわたくしが、大変生意気な物言いながら、“予想をはるかに超えるその出来”について、あらかじめ用意していた感想を興奮気味に述べると、
「そうか。結構、イケるか? まーそんなに悪くないだろ?」
と、やはりうれしそうに、返してきたのです。
弟子であり、“たけし原理主義者”のわたくしが申すのも、やや説得力に欠けますが、「アナログ」、相当いいです! はい。
で、「アナログ」は中身も最高ですが、その“周り”も、最高なんです。まず、殿がたびたび口にしている売り文句がたまりません。
「今回は、俺が本当にちゃんと書いた!」
さらに、出版に際し宣伝用に作られた、殿が照れた表情で下を向き、右手でこめかみあたりをポリポリとかいている、“少し恥ずかしいけど、オイラが思う恋愛って、こういうことだよ”的な意味にとれる、実にいい雰囲気のポスターに対し、
「見てみろ、このポスター。この顔は焼き肉屋で散々食べたあと、お勘定が足りなくて、『どうやって逃げようかな‥‥』って悩んでる時の顔だよ」
と、せっかくの素敵な販促物に、みずからオチをつけ、笑わせてもいました。
とにかく、ここ最近の殿は、もう小説の話ばかりで、照れながらも、「なんとか売れねーかな?」「次の題材は何にするかな?」等々、すっかり“小説家”としての発言をよくするのでした。
そんな殿ですから、「アナログ」を購入された読者には、喜んでサインをしています。先日も、番組のスタッフが「アナログ」を手に持ち、なかなか「サインいいですか?」と切り出せず、モジモジしていると、
「おう、あんちゃん。なんだ? サインか。こっち来いよ」
と、みずから積極的にサインを書いていました。
で、近すぎるため、弟子になってからこのかた、1枚もサインを頂いたことのないわたくしは、“ここがチャンス!”と見て、「殿、僕もいいですか?」と、おっかなびっくり本を差し出すと、「北郷はこれだな」とつぶやき、〈ポール牧〉と書き込んだのを渡してくるのでした。ちなみに、この“まともにサインを書かない”といった遊びは、わたくしが3年程前に、こちらの連載をまとめて出した単行本「たけし金言集」をライブで販売する際、〈殿のサインが入ってたら、みんな喜ぶだろうな〉と思い、サインをお願いすると、殿が笑いながら〈ビートきよし〉と、書いたのが始まりで、最近では、もはや名前ボケではない言葉で、どんどんひどくなっています。わたくしが殿からまともなサインを頂ける日は、まだまだ遠そうです。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!