先日、殿の完全書き下ろし小説「ゴンちゃん、またね。」が、某週刊誌に特別掲載されました。去年の9月、純愛小説「アナログ」を発表してからの殿は、「これからは小説家として生きていく」「もうお前らに殿とは呼ばせない。文豪と呼べ!」等々、すっかりモードは「作家」であり、その言葉どおり、自宅へ帰ると、今もせっせと執筆活動に励んでいて、「ゴンちゃん、またね。」の他に、すでに書き上がっている新作が2冊ほどあると聞きます。そんな、何かに取り憑かれたように書きまくっている昨今の殿に、「殿は忙しい中、いったい、いつ書いてるんですか?」と、素朴な質問をあてると、
「そりゃー、あれだよ。夜な夜なヒロポンを打って、頭をギンギンにして寝ないで書いてんだよ!」
と、“聞いたこっちがバカでした”と猛烈に後悔したくなることしきりのボケをまずはかますと、続けて、
「だから、あれだ。お前のアサ芸(殿は当連載のことを必ず「お前のアサ芸」といった言い方で表現します)に『殿は浅草時代に入手したヒロポンを今でも隠し持っていて、それを打って、ギンギンにトリップして書いてます!』って書いとけ!」
と、実に殿らしい発言を放り込んできたのです。
それにしても、テレビのレギュラーを6本、その他に、特番の収録や映画の台本作成等々、年間の休みが2週間ほどしかない、誰がどう見ても芸能界一多忙な殿が、この半年ほどで小説を3本書き上げた事実には“悪い薬に頼って書いている”といった冗談も、あながちでたらめではない気がいたします。が、そんなこちらの驚きなどどこ吹く風で、殿自身は実に無邪気に、
「だけどよ、これでホントに賞なんか取ったら、文豪コントができるな! そしたら思いっきりバカなコントをやってよ、『あいつに賞あげなきゃよかった』なんて思われたら勝ちだな!」
と、それのどこが勝ちなのか、よくわからない持論を展開するのです。ただ、ヴェネツィア映画祭でのグランプリに、フランスからの度重なる勲章の授与と、今までにとんでもない賞をかっさらってきた殿ですから、失礼ながら、“国内の文学賞までももらい受ける運”を、持っているのでは? と、想像してしまいます。で、こういった“賞の話”の後に今、必ず出る話題が、ノーベル賞です。
「こうなったらノーベル賞もらってよ、立ち小便なんかして、はく奪されるのが一番いいな!」
と、例によって、それのどこが一番いいのかよくわからない持論を展開したりします。
最後に、かなり昔、やはり殿が小説を出した時、「俺を四谷の文豪と呼べ!」と、弟子に強制した時期があり、皆が言いつけどおりに、「四谷の文豪、時間です」「四谷の文豪、弁当です」等々と呼んでいると、
「なんかお前ら、バカにしてねーか。やっぱりやめだ!」
と、瞬時に撤回した過去があったことを、ここに報告しておきます。
ビートたけしが責任編集長を務める有料ネットマガジン「お笑いKGB」好評配信中!
◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!